Dr.中川 がんサバイバーの知恵

秋野暢子さんは診断まで半年超 喉の受診は耳鼻科と消化器科をセットで

秋野暢子さん
秋野暢子さん(C)日刊ゲンダイ

 ステージ3の食道がんを治療中の女優・秋野暢子さん(65)がブログを更新。がん診断までのいきさつを明らかにしています。その内容は、読者の参考になるかもしれませんので、ご紹介しましょう。

 秋野さんは毎年人間ドックを受けていて、昨年は11月15日に。それとは別のなじみの胃腸クリニックで22日に胃の内視鏡検査を受けています。ドックでは、アレルギーの可能性を指摘され、胃は「逆流性食道炎の感じがある」と言われたそうです。

 その後、のどの違和感を覚えたのは12月下旬でしたが、ネット情報から自律神経の不調との自己判断で鍼や整体を渡り歩くことに。その間、新年になって総合病院で腫瘍マーカーを調べ、正常値だったそうです。

 のどの詰まりはよくならず、今年5月31日に別の耳鼻科で逆流性食道炎の診断。6月3日、なじみのクリニックで処方された逆流性食道炎の薬を初めて飲んでもよくならず、同20日、同じクリニックで胃の内視鏡検査を受け、大学病院を紹介されて食道がんの診断に至っています。

 ぜひ、みなさんに覚えておいてほしいのは、のどの違和感で何科を受診するかです。のどを直接診察するのは耳鼻咽喉科ですが、それがすべてではありません。

 一口にのどといっても咽頭や喉頭の異常もあれば、食道の異常もあります。どちらのがんでも、のどの違和感として自覚しやすいので、耳鼻科を受診して咽頭や喉頭に異常がなければ、今度は消化器科を受診して食道を調べること。どちらが先でも構いませんが、最初の受診で異常がなければ、もう一方を受診して調べてもらわないと診断の遅れにつながります。どちらか一方では、不十分なのです。

 秋野さんは昨年12月にのどの違和感を訴えてから食道がんと診断されるまで半年以上かかりました。昨年12月に最初の異変を感じたときに、ネット情報から自律神経の異常と判断されましたが、あの時点で耳鼻科と消化器科で丁寧に検査を受けていれば状況は大きく変わっていたはずです。

 秋野さんは、腫瘍マーカーを調べ、それらが正常だったことで、後日、「腫瘍マーカーでは分からないがんもある」と振り返っています。その背景には、“腫瘍マーカーでがんを診断できる”という誤解があるためでしょう。

 皆さんも、この誤解を持っている人が多いはずで、この誤解はすぐに解いてください。

 腫瘍マーカーががんの診断に役立つのは前立腺がんのPSAと肝臓がんのAFPくらい。多くのがんは、腫瘍マーカーでは分からないと考えるべきです。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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