60歳からの健康術

性感染症編(6)増え続ける60歳以上の性感染症 原因は?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 枯れて性感染症とは縁遠くなるはずの60歳以上の性感染症が増えているという。どういうことか。「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)の著者で日本性感染症学会の功労会員でもある「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長に聞いた。

「理由は3つあります。第1にいまの60代以上は
健康でセックスを楽しむ人が多い。第2に免疫機能が低下して感染しやすい。第3に『閉経した女性は妊娠しない』ということと『日本女性の閉経年齢は50歳前後で、早ければ40代前半でも閉経する』ことを勝手に結びつけ、50代以上はコンドームなしでも大丈夫ではないかと思い込んでしまい結果的に性感染症になる人がいます」

 実際、大手コンドームメーカーの相模ゴム工業の調査によると60代の1カ月の平均セックス回数は男性1.2回、女性0.8回。20代の4.4回、3.8回に比べると少ないが、性生活を楽しんでいることがわかる。

 一方で免疫機能は60歳以上は20代の半分以下とも言われている。またコンドームメーカー「ジェクス」が2020年に行ったネット調査によると、セックス前にコンドームを用意する60代男性は33%で20代男性の67.4%の半分以下だった。

 では、実際に60歳以上の性感染症はどのくらい増えているのか。厚労省の「年齢(5歳階級)別にみた性感染症(STD)報告数の年次推移」で、60歳以上の患者数を平成12(2000)年と令和2(2020)年とで比較した。

①「梅毒」(224人→456人)②「性器クラミジア」(246人→324人)③「性器ヘルペス」(885人→1149人)④「淋菌」(120人→161人)⑤「尖圭コンジローマ」(94人→327人)と確実に増えている。

 ただし、この数字は国から指定された定点と呼ばれる医療機関からの患者報告数であり、すべてではない。定点が増えれば当然患者数は増える。定点数は平成12年は897、令和2年は981だったので、それぞれ1医療機関当たりの患者数で比較すると、①0.249人→0.465人②0.274人→0.330人③0.986人→1.171人④0.133人→0.164人⑤0.104人→0.333人と、やはり増えている。

「注意したいのは定点は全体の医療機関の数からすればごく一部に過ぎないことです。症状のない患者数は実際の患者数の5倍以上いると言われていますから、実際の患者数はかなり多いということになります」

 なお、厚労省の令和2年度衛生行政報告例の概況によると、人工妊娠中絶件数は「45~49歳」で1319人、50歳以上は11件だったという。避妊のためにも60歳以上でもコンドームは携帯しておくことが必要だ。

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