コロナ第7波に備える最新知識

コロナ感染者増は「謝らない専門家」への不信感の積み重ねではないか

全国の感染者数は26万人を突破
全国の感染者数は26万人を突破(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナの感染拡大が止まらない。全国の感染者数は19日には初めて26万人を突破、2日連続で過去最高になった。

 首都圏を中心に大都市圏では新規感染者数は減少に転じたものの、一部地方では増加が続き、これまでで最も高いレベルでの感染が続いている。この傾向は当分続きそうだ。

 ベータ株やデルタ株では感染者数が少なかった日本で、なぜここにきて急増しているのか?

「感染力の強いBA.5系統のオミクロン株が登場したことも原因のひとつでしょうが感染対策において皆が共有できる正確な情報がなく、互いの感染対策の常識がかけ離れてしまっていることが問題だと思います」と言うのは公衆衛生に詳しい岩室紳也医師だ。

「無症状でも感染している人は大勢います。ウイルスは感染者の吐き出す飛沫やエアロゾルに含まれます。しかし、基本的に飛沫は真っすぐに飛び、2メートル先に落下することがわかっています。それを避けるには相手に飛沫がかからないように横を向いて、角度をつけて、小声で話をすればいい。エアロゾルも空気の流れをつくって拡散、排気する。また、飛沫がかかった料理を食べない、飛沫がかかった物に触れた手を口元や目元などに持っていかない、などの注意をすれば感染リスクはかなり下がります。こうした当たり前の情報が徹底されず、とにかくマスクやワクチンさえしていればいいんだろう、ということになり、なぜ、どういうところで、どんな人に対してマスクやワクチンが必要なのか、わからなくなった。それが問題ではないでしょうか」

■普及啓発のプロづくりの失敗

 その根底には政府広報や専門家の発言への不信感があるのではないか。

「私はこの間、基本的な感染症対策の普及啓発のための専門家が育たなかったせいだと思っています。その背景には間違っても謝らない専門家や間違いを軌道修正させるチャンスを与えないマスコミへの不信感の積み重ねにあるのではないでしょうか。2年半に及ぶコロナ禍で私も含めてマスコミで発言している専門家のなかに誤解や間違いもあった。それは大きな間違いでなくても伝えるうえで、誤解を受ける表現もあるわけです。それを、きちんとただす。そして普及啓発に当たる専門家同士が議論する。そのうえで国民一人一人の感染症対策の常識を集約していく。それができなかった。その結果、各自の常識に差が生まれた。いまではそれを指摘すると軋轢となる。そのことを恐れて、誰も指摘しなくなり、いい加減な感染症対策となり感染者増を招いたのだと思います」

 専門家が議論して正しい基本的な感染対策を練り、それを国民に繰り返し繰り返し伝えていく。いま必要なことはニュースになるような感染対策ではなく、誰もが理解して実行できる感染対策の普及ではないのか?

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