「アニサキスアレルギー」は完治困難…防ぐために実践すべき3つのこと

外食できなくなる
外食できなくなる(C)日刊ゲンダイ

 近年発生件数が増えている「アニサキス症」と、「アニサキスアレルギー」の違いをご存じか? 2018年にアニサキスアレルギーを発症し、21年6月4日に「一般社団法人アニサキスアレルギー協会」を立ち上げた佐藤尚之さん(同協会代表理事)に聞いた。

 アニサキスは、魚介類に潜む寄生虫だ。「アニサキス症」は、刺し身や寿司など生魚を食べたことでアニサキスが生きたまま胃や腸に入り、激しい腹痛や嘔吐に襲われる。内視鏡でアニサキスを摘出すれば症状は治る。放置しても、数日すればアニサキスが死ぬので、症状は治る。

 一方、アニサキスアレルギーはまったく別の病気で、食物アレルギーの一種だ。発疹、かゆみ、喘鳴、呼吸困難などの症状を引き起こす。意識障害や血圧低下を伴うアナフィラキシーショックを起こせば、対処が遅れると命に関わる。

「アニサキスアレルギーは、アニサキスの抗体に反応してアレルギー症状が起こります。生きているアニサキスだけでなく、死骸やカケラにも反応します。少し食べただけでもアナフィラキシーショックを起こすリスクがあります」

■あらゆるものが食べられなくなる

「アニサキスの抗体に反応」なので、魚介類全般、調理法を問わず、食べられない。干物、缶詰、カツオだしなど魚介のダシが効いたつゆや味噌汁、魚介類が入る鍋もダメ。アンチョビーソース、魚醤、ナンプラーもダメ。魚介エキスが入っているものは多く、ダシ醤油、めんつゆ、ポン酢、ドレッシング、スナック菓子、弁当もダメ。オキアミを使っているキムチもダメ。

「アニサキスアレルギーを研究している先生が言うには、アニサキスアレルギーは海水のアレルギー。あらゆる海のものは避けてくださいと言われる。昆布もワカメも海苔も、海水から作っている塩も危ない。川魚も海から上がるのでNG。一見大丈夫そうな料理、食品、調味料でも魚介エキスが入っていたり、隠し味として加えられていたりすることはよくある。日本はダシ文化なので、広範囲の料理に魚介類が関係しています」

 食べられるものが非常に限定される。外食の際、何を使っているかを聞けても、複数の料理人が働いていたりチェーン展開している店だったりすると、調味料に至るまで原材料を全員が完全に把握できていない。「隠し味」として使っているので企業秘密ということもある。聞きすぎると、クレーマー扱いされる。

「ランチで外食は諦めています。食べるとしたら、具が入っていないパン。ディナーでは、オーナーシェフでソースなどもすべて手作りしており、シェフが原材料を把握している店か、魚介類を取り扱っておらず味噌汁が赤ダシではなく豚汁の豚カツ屋、ビーガン対応をしっかりしている南インド料理屋など。そばやうどんなどは、魚介類を使わず干しシイタケでダシを取ってつゆを作っています」

 アニサキスアレルギーは、魚介類が身近な日本人にとってトップクラスにきつい食物アレルギー。成人になってからの食物アレルギーは、非常に治りにくいといわれている。ならずに済むならそれに越したことはないが、魚介類を食べる人なら誰でも発症する可能性がある。

「完全に発症リスクを抑え込むのは難しいものの、食物アレルギーは体調の悪さが引き金となって発症することが多い。私がぜひとも言いたいのは、体調が悪い時、疲れている時は刺し身や寿司など生魚は食べない。アニサキス症の人は、アニサキスアレルギーになっているとの指摘もあるので、アニサキス症のリスクを減らすことが重要です。少なくとも、乱暴なさばき方や調理をしているところでは、生魚を食べない方がいいでしょう」

 アニサキスアレルギーは認知度がまだまだ低い。一般社団法人アニサキスアレルギー協会では、専門家と患者がタッグを組んで、役立つ情報を今後どんどん発信していく予定だという。

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