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いつ打てば…? 米国がオミクロン変異株対応ワクチン認可で大混乱

50歳以上または免疫不全の人向けに用意された新型コロナワクチンの注射器(C)ロイター
50歳以上または免疫不全の人向けに用意された新型コロナワクチンの注射器(C)ロイター

 アメリカでは先週、オミクロンBA5株対応のワクチンが認可されました。最も多い人では5回目の接種になりますが、すでに混乱が起きています。

 ファイザー社とモデルナ社が同時に認可を受けたのは、いまだ猛威を振るうオミクロンBA5株と、従来型の両方に対応する2価ワクチンです。このコラムが出ている頃には、早ければ接種が始まっているはずですが、問題は今打つべきなのか、打たない方がいいのか?

 疑問を感じてしまう理由は、あまりにも早い認可です。政府が両製薬会社に製造を依頼してわずか2カ月。行われたのはマウス実験のみ、まだ人への臨床実験の最中で、データがいつ揃うかもわからない。つまり肝心のBA5株への効果も、まだはっきり見えていないのです。

 情報の混乱もあります。アメリカでは未だ1日8万人もの人が感染しているため、多くがBA5株の自然免疫を得ていると考えられます。では自然免疫があれば新ワクチンは受けなくていいのか? またこの秋もし新たな変異種が流行したら、このワクチンは効果はあるのか? 答えは質問をぶつけた専門家によって違うのが現状です。

 1つだけ信頼できそうなのは、50歳以上または免疫不全の人で、前回の接種または感染から半年以上経っている場合は、受けた方がいいというアドバイス。たとえ新たな変異種に感染したとしても、ワクチンを打つことで重症化率はずっと下がるとしています。

 一方で興味深いのは、バイデン政権がこれをインフルエンザの予防接種に例えていること。つまり予測した型が外れても、打っておけばある程度の防御にはなるという考え方です。 

 しかしインフルエンザとは違い、アメリカでは未だ毎日500人近くが亡くなり、死因としても1位の心臓疾患、2位のがんに続いて3位。コロナのためにアメリカ人の平均余命が3年も縮まったことが、つい先日報道されたばかりです。

 ところがコロナを死のリスクと考えている人はわずか2割。まるで現実を仕方ないものとして、受け入れてしまったかのようです。正直どう捉えていいかもうわからない、そんな思いもワクチンをめぐる混乱につながっています。

 今後ワクチン接種は年に2回の年中行事になるのか、その前にこの冬に向けていったいどんな流行が起きるのか? 1つだけわかるのは、コロナはまだまだ消えないということです。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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