コロナ後遺症のだるさや疲労感に漢方薬「加味帰脾湯」が使われている

軽症でも倦怠感など後遺症が残ることも…
軽症でも倦怠感など後遺症が残ることも…

 東京都は、オミクロン株の流行が広がった1月から7月20日までにコロナ後遺症を訴え、都立病院の外来を受診した119人の症状を調査・分析した。

 オミクロン株は、それまでの株に比べて軽症であることが多いといわれるが、発表によると、後遺症を訴える人の71%がコロナは軽症だった。

 コロナ後遺症の症状は多岐にわたるが、高い頻度で見られるのが、倦怠感、頭痛、咳、息切れ、味覚障害、嗅覚障害。中でも倦怠感は、最もよく見られる症状だ。

 デルタ株以前の調査(230人)と比較すると、オミクロン株は後遺症の症状として倦怠感や咳を訴える人が多く、比率では、倦怠感がオミクロン株46%に対しデルタ株40%、咳が22%対14%だった。

 一方、息切れ、嗅覚障害、味覚障害は、デルタ株以前よりも減少した。

 後遺症の出現時期は、全体の約82%が発症から1カ月未満。1カ月以上経過してから後遺症の症状が見られた人は約18%と少なかった。東京都は「後遺症は、年齢やコロナ罹患時の重症度などにかかわらず、発症する可能性がある」としている。

 これまで当欄ではコロナ後遺症の対症療法について、何度か紹介してきた。漢方薬を用いてコロナ後遺症の治療にあたっているのが、新見正則医院(東京・千代田区)の新見正則院長だ。

「当院は自費診療のクリニックのため、コロナ後遺症で来院した方には、まずは保険診療でオンライン診療に対応している出雲漢方クリニック(島根県)を紹介し、保険適用の漢方薬を使ってもらいます。3カ月経っても症状が改善しない患者には、保険適用ではないがコロナ後遺症に効果があると考えている漢方薬を用いています」(新見院長=以下同)

■心身両面に効果

 前述の通り、コロナ後遺症で最もよく見られる症状が倦怠感だ。

「コロナ後遺症の倦怠感は、イメージとして『重力に逆らえない』。起き上がれない、座ったら立ち上がれない……。精神的な落ち込みもある。そこでコロナ後遺症が考えられる患者さんには加味帰脾湯を用います。1日3回、倦怠感がある間は毎日飲んでもらいます。3週間ほどで改善が見られる方が多い」

 加味帰脾湯は東洋医学では、虚弱体質で心身が疲れ、不眠、精神不安を抱える人に適した薬だ。朝鮮人参、黄耆などの生薬が配合されている。

「朝鮮人参と黄耆は、簡単に言えば、体を元気にする作用があります。これら2つの生薬が使われた漢方薬には、補中益気湯もあります。心身の疲れもあるコロナ後遺症には加味帰脾湯が向いていますが、手に入らない場合は補中益気湯でも構いません」

 いずれも併用が禁忌とされている薬はなく、持病の薬と一緒に飲んでも問題ない。

「加味帰脾湯を飲んでいるけど3カ月経っても倦怠感が強いという人には、フアイアという漢方薬を提案します。日本では健康食品の扱いですが、中国、米国ではがんの治療薬として承認されており、また肝臓がんに関してエビデンスレベルが高い大規模試験で効果が実証されています。免疫低下に作用する論文も多数あり、加えて免疫亢進作用も研究で明らかになっています。コロナ後遺症には免疫機能の異常が関係しているという指摘もあるため、効果があると考えています」

 実際、加味帰脾湯にフアイアをプラスしたことで、時間はかかるものの、倦怠感から脱した患者は少なくない。ただし1日1000円ほどする高額な漢方薬である。

■健康保険適用

「コロナ後遺症は確立された治療法が現段階ではなく、対症療法しかない。保険適用となるのは漢方薬か上咽頭擦過療法だけです。上咽頭擦過療法は一部の耳鼻科でしか行われていない。手に入りやすく副作用の心配もさほどいらない漢方薬は、まず用いるのに最適だと考えています」

 後遺症を疑ったら、加味帰脾湯。薬局でも買えるが、保険適用になるのは、漢方の治療を行う医療機関を受診し処方された場合になる。

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