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性感染症編(12)「梅毒」発覚した144人の病期はいつが多いのか

20代の女性に多い(写真はイメージ)/
20代の女性に多い(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 梅毒の感染拡大が止まらない。国立感染症研究所が9月21日に発表した統計データによると、第37週(9月12~18日)で新たに144人の新規感染者が見つかり、今年の累計は8746人となった。年内1万人を超えるのは確実の情勢だ。気になるのは新たに見つかった144人はどのような段階で見つかったか、だ。「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)の著者で日本性感染症学会の功労会員でもある「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長に聞いた。

「梅毒は感染後3~6週間の潜伏期間を経てさまざまな症状が出てきます。病期は大きく早期顕症梅毒第Ⅰ期、早期顕症梅毒第Ⅱ期、潜伏梅毒、晩期顕症梅毒の4つに分類されます。第37週で新たに報告された144人は早期顕症Ⅰ期70例、早期顕症Ⅱ期46例、晩期顕症1例、無症候27例です」

 早期顕症Ⅰ期とは病原体である梅毒トレポネーマ感染約3週間後に、初期硬結、硬性下疳(潰瘍)が形成される段階。無痛性の所属リンパ節腫脹を伴うことがあり、無治療でも数週間で軽快する。

 早期顕症Ⅱ期は第Ⅰ期梅毒の症状がいったん消失した後4~10週間の潜伏期を経て、手掌・足底を含む全身に多彩な皮疹、粘膜疹、扁平コンジローマ、梅毒性脱毛などが出現した状態を言う。発熱や倦怠感などの全身症状に、泌尿器系、中枢神経系、筋骨格系の多彩な症状を呈することがある。

「ただし、第Ⅰ期梅毒と同じように、数週間から数カ月もすれば無治療でも症状は軽快します」

 早期顕症Ⅰ期とⅡ期の間の症状喪失状態と、Ⅱ期の症状消失後の状態が潜伏梅毒といわれる。今回、新たに見つかった無症候の27人とはこの段階だとみられる。

 晩期顕症梅毒は、無治療の3分の1に現れる症状で、数年~数十年経過した後に、長い非特異的肉芽腫様病変(ゴム腫)、進行性の大動脈拡張を主体とする心血管梅毒、進行麻痺、脊髄癆などに代表される神経梅毒に進展するものを言う。

「驚くのは晩期で発見される人が意外に多いことです。感染症動向調査の週報の7月25日から9月18日までで11人いて、この間の感染報告者数1312人の0.83%に当たります。また、この間に見つかった先天梅毒も2人いました。注意したいのはこの間、無症候で見つかったのが228人で全体の17.3%だったことです。無症候の患者さんがこれだけいるということは、潜在的に梅毒の感染者がかなり広まっていると考えた方がいいでしょう」

 いまの梅毒感染症の3分の1は女性で20代が圧倒的に多い。若い女性との交際は十分注意することだ。

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