腎臓は、我慢強く、その機能が低下し始めても、なかなか自覚症状が現れにくいということは前回お話ししました。
「沈黙の臓器」ですから、自覚症状が出る頃にはすでに腎機能がかなり低下してしまっている状態がほとんど。では早い段階で腎機能の低下を知るためには、どうすればいいか。最も重要なのは、健康診断を1年に1回必ず受けることです。
よく患者さんから「腎臓を守るために、普段からなにをすればいいですか」と聞かれますが、私が考えるその方法は「まず見つけること」。
自覚症状はなくても、腎機能が低下していると数値に表れます。血液検査や尿検査で腎臓に関する数値が標準であれば、普段の生活ではとくに「腎臓を守らなくっちゃ」と気にする必要はありません。
ただし、健康診断で数値にエラーが出たら、放置は絶対にダメ。「基準値より少しずれている程度だから、まだ放っておいてもいいかな」という考えは禁物です。
なぜここまで強く言うか──。それは、原則として1度悪くなった腎臓は回復しないからなんです。だからこそ、健康診断で早く見つけるのが望ましい。これが、腎臓の啓発活動を行う医師として最も声を大にして言いたいことです。
腎機能が低下していないかどうかは、血液検査の「eGFR」と尿検査の「尿たんぱく」の数値を見ます。私の考えでは「eGFRは腎臓の通信簿、尿たんぱくは腎臓からのSOS」。
簡単に説明すると……。eGFRは、腎臓の「糸球体」で、1分間でどれほどの血液をろ過しているかを示す値。腎臓の働きが悪くなると、処理できる血液量が低下します。私は患者さんに「eGFRは、若い健康な人の腎臓を100%としたとき、いま自分の腎臓は何%動いているかを見る検査項目」と伝えています。60%以下なら慢性腎臓病の可能性が、10%以下なら人工透析が必要になるというイメージでよいでしょう。
一方、尿検査でも腎臓の障害を調べることが可能で、最も重要なのが尿たんぱくです。健康診断などで行われている尿たんぱくの検査は、マイナス、1+、のような形で結果が出ます。マイナスなら異常なし。尿たんぱくが1+、2+、3+の場合は何らかの異常がある可能性があります。血液検査で尿たんぱくにエラーが出た場合は、さらに詳しく、たんぱくが何グラム出ているかを調べる検査をする必要があります。
健康長寿のカギは腎臓にあり