健康の「素朴な疑問」

生活習慣病は胎児期に決まるって本当? 疫学研究での報告も

「小さく生んで大きく育てる」が最近の傾向(写真はイメージ)
「小さく生んで大きく育てる」が最近の傾向(写真はイメージ)

【Q】 長男の嫁が妊娠しました。私たち夫婦にとって初孫なのでうれしいのですが、気になるのが嫁の食が細いこと。しっかり食べて元気な子を産んで欲しいのですが、嫁は「小さく産んで大きく育てる」と言ってあまり食べません。それでもバランス良く食べてくれればいいのですが、偏食傾向にあるようです。妊婦の食事が生まれてくる子供に影響することはないのでしょうか?

【A】 近年、生活習慣病胎児期発症説が注目されています。低栄養下で胎児が発育すると、小さく生まれ、生活習慣病(2型糖尿病、高血圧、脳梗塞、脂質異常症、神経発達異常など)の発症リスクが高まる体質になりやすい、というのです。この説を証明したとされる有名な事件があります。第2次世界大戦中にオランダ西部をナチスドイツが包囲し、多くの餓死者を出しました。そのとき妊娠していた女性の子供を追跡調査したところ、多くが生活習慣病を発症したというのです。

 日本では若い女性にスマートな体形に憧れるやせ願望が強く、妊婦になっても食事の摂取量が少ない傾向があるうえに、ご飯を中心としたバランスの良い和食が敬遠されていることなどから、そのリスクが高くなっているとの見方があります。実際、国民健康・栄養調査によると20代女性の1日のエネルギー摂取量は1970年代から減少傾向にあり、1995年に1886キロカロリーだったのが2018年では1600キロカロリーまで低下しています。その後、さまざまな疫学研究がなされていますが、妊娠初期の炭水化物摂取量が少ないと、生まれてくる子供の体脂肪が増加する傾向にあるとの報告があります。これは小児肥満リスクを意味し、大人の生活習慣病への移行リスクが高いと考えられています。

(弘邦医院・林雅之院長)

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