以前もお話ししたように、感染症、悪性腫瘍、膠原病は3大不明熱疾患と呼ばれ、感染症では結核や感染性心内膜炎などが不明熱の原因として知られています。
以前に、こんな患者さんがいらっしゃいました。たしか、80代くらいだったと記憶しています。クリニックで処方された抗菌薬(抗生物質)を服用してやや解熱はするものの、発熱を繰り返す患者さんでした。
結局、原因不明で入院となり、医師はCTやMRI、血液検査などを行って発熱の原因を探そうとしました。その過程で、ひとりの看護師が、患者さんの腰に大きな潰瘍(褥瘡)を見つけたのです。そう、この患者さんの発熱の原因は褥瘡だったのです。
褥瘡は「床ずれ」とも呼ばれ、寝返りを打ちにくい方、寝たきりの方、栄養状態の悪い方ら高齢者によく見られる疾患です。
持続的に圧力のかかりやすい、骨の出っ張った部位にできやすくなります。あおむけで寝ているときに最も発生しやすいのは、体圧のかかる仙骨部(お尻の中央の骨が出た部分)です。また、横向きに寝ているときは大転子部(太ももの付け根の外側)などに発生しやすくなります。
軽い褥瘡の場合は、軟膏剤による治療のみで終わりますが、壊死がある場合などには、この部分を取り除く処置(デブリードマン)を行うケースもあります。
冒頭の患者さんもそうでした。潰瘍部分に膿がたまり、この膿瘍が感染源になっている場合、抗菌薬により体内の細菌を殺菌できたとしても、膿瘍部分で増えた細菌がまた体内に供給されてしまいます。そのため、抗菌薬投与だけで完全に解熱するのは難しく、抗菌薬による治療に加えて、膿瘍部分を取り除く必要があるのです。
高齢の患者さんや認知症の患者さんは、痛みなどの訴えを医師や看護師に伝えられない場合もあり、傷を見逃されてしまう事例もあるようです。
褥瘡の予防には体圧を分散するマットなども有効です。高齢者、認知症、睡眠薬を服用されている方ら、褥瘡に注意が必要なときは試してみるのもよいかもしれません。
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