健康の「素朴な疑問」

「死ぬ」とはどういうことなのか 医師は3つの事柄で判定

「死とは何か?」(C)PIXTA
「死とは何か?」(C)PIXTA

【Q】 年を取ったせいか、最近、「死」について考えることが多くなりました。そこで気になっているのは死の定義です。昔は、呼吸と心臓が止まれば死と認定されたと聞きます。しかし、呼吸も心臓も止まったと思われた人が生き返ったなんて話は昔からあります。いまは脳の機能が完全に喪失して元に戻らない状態とされる「脳死」が死の定義になっているようですが、いったん死んだように見えた脳が蘇生することはないのでしょうか?

【A】 現在、人の死の宣告は医師にしかできないことが法律によって定められています。人体の解剖、生理、病理などの知識を有する医師でなければ死を判定できないとされているからです。

 医師は3つの事柄を確認することで死を判定します。

 ①心肺の停止②呼吸の停止③対光反射の消失など脳機能の停止です。

 医学的に人の死は生命の輪を構成する心臓、肺、脳の少なくともひとつの機能が永久に停止した状態だと考えるからです。

 しかし、脳が機能しなくなった脳死体では爪が伸び続け、生理が起きる場合があり、脳死から数週間~数カ月後に出産したケースが30例以上報告されたともいわれています。心臓や肺が動かなくなったとしても、人工心肺や心臓のペースメーカーが開発された現在においては、そのひとつが機能しなくなったからといってそれをもって死と言えないでしょう。

 では、脳機能が停止すれば死んだといえるのでしょうか? 

 2019年に米国の大学医学部の研究チームが食肉処理場で解体された、死後4時間後の豚の脳の一部再生に成功しています。この先、技術が進歩することで「死とは何か?」を定義することはますます難しくなっていきそうです。

(弘邦医院・林雅之院長)

関連記事