新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日本では4回にわたる緊急事態宣言が発令されました。宣言が発令されている間は、不要不急の活動や移動の自粛が求められ、飲食店には時短営業が要請されました。また、リモートワークの推進や大規模イベントが相次いで中止されたことも記憶に新しいと思います。
人の流れが大きく抑制された結果、感染拡大が抑止され、緊急事態宣言には一定の効果があったことは確かです。一方で、長きにわたるコロナ禍において、さまざまな制約を受けることのストレス、いわゆる「コロナ疲れ」を感じる人も増えたことでしょう。
そのような中、度重なる緊急事態宣言やGoToトラベルキャンペーン(国内旅行の再活性化を目的とした政策)によって、人の流れがどのように変化したのかを検討した研究論文が日本疫学会誌の2022年11月号に掲載されました。
この研究では、スマートフォン端末から収集した位置情報を用いて、緊急事態宣言やGoToトラベルキャンペーン期間中の、都道府県をまたいだ人の移動量が解析されています。
その結果、1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4~5月にかけて、人の移動量は1億6600万件から1億2100万件に減少し、5月には1億1200万件へとさらに減少しました。特に地理的に遠方である都道府県への移動量が大きく減っていました。
ただし、緊急事態宣言が発令されるたびに、移動量に対する減少効果は弱まっていました。一方で、GoToトラベルキャンペーン期間中では、人の移動量が増加し、移動量の増加と感染率の上昇にも関連性を認めました。
論文著者らは、「緊急事態宣言が発令されるたびに、移動量の減少幅は小さくなり、コロナ疲れという、社会現象との一致が確認された」と結論しています。