咳、痰、息苦しさ…それらの症状なら呼吸器疾患「COPD」の可能性あり

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 16日は、世界COPDデーだ。COPD(慢性閉塞性肺疾患)は肺気腫と慢性気管支炎を総合した病名で、たばこ病とも呼ばれている。

 COPDは別名通り、原因のほとんどがたばこ。たばこの有害物質が長期に気道や肺に触れることで炎症が生じ、肺胞が破壊され、呼吸がしにくくなる。喫煙者はもちろん、非喫煙者であっても副流煙で発症する。

「COPDは世界の死亡原因第3位。近年、有効な治療薬が登場しているにもかかわらず、国内において年間1万6000人が死亡しています」

 こう指摘するのは、昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門主任教授の相良博典医師。

 死亡者数が多い理由として挙げられるのが未診断患者の多さ。推定患者数530万人だが、厚労省「患者調査」で病院でCOPDと診断された人は22万人。500万人以上が治療を受けていない。

「COPDは喫煙から20~30年かけて発症します。その間に呼吸機能は徐々に低下し、咳や痰といった症状もあるのですが、それに慣れてしまい病院に行こうと思わない。日本人は非活動的な人種であり、動かないから息苦しさがわからないという点もあります」(相良医師=以下同)

 COPDは自然に治る病気ではない。破壊された肺胞は元に戻らないので、治療が遅れるほど悪化する。年間の増悪(呼吸困難などの症状の悪化)の回数が多いほど死亡率が高くなることは研究で明らかで、増悪が3回以上の患者では、0回と比べて死亡率は4.3倍。重度の増悪を起こすと、22%が1年以内に死亡している。

 次に、併存症が多いのも問題だ。COPD患者のほとんどが心疾患、糖尿病、脂質異常症、骨粗しょう症といった併存症を持ち、4つ以上の併存症状を持つ人は半数を上回るといった報告がある。肺がんのリスクも高める。

■治療に漢方薬を使うケースも

「フレイル(虚弱)も招きます。COPDは動けば動くほど息が苦しいので、動かなくなる。すると運動能力が低下し、骨格筋が衰え、ますます動いた時の呼吸困難が悪化し、抑うつ状態となって生活の質が下がる」

 COPDになると呼吸機能の低下をカバーするため、呼吸筋を一生懸命動かすようになるので呼吸にかなりのエネルギーを使う。健康な人で呼吸に使うエネルギーは1日50キロカロリーだが、COPDでは500~600キロカロリー。加えて、膨張した肺が胃袋を圧迫し食欲不振となる。エネルギーを使う上、食べられないのだからフレイルが一層進む。

「フレイルになるとCOPDの予後が悪い。併存症の悪化や死亡のリスクも高める。COPDの早期発見、早期治療とともにフレイル対策も重要」

 COPDを疑うポイントとしては「喫煙習慣がある(または、副流煙に長くさらされてきた)」「咳や痰、喘鳴がある」「風邪の後、症状が長く残る。風邪がひどくなりやすい」「階段や坂道を上ると息苦しい」「息が切れて同年代の人と並んで歩けない」など。該当するものがあれば呼吸器内科を受診すべき。

 治療は禁煙、呼吸器リハビリテーション、気管支拡張薬や吸入ステロイド薬などの薬物療法。さらに相良医師は、漢方薬も治療に積極的に取り入れている。

「食欲がない、疲れやすくて体力がないといったフレイルが疑われる人には、補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯。呼吸器症状のうち乾いた咳には麦門冬湯、激しい咳には麻杏甘石湯、痰が絡むような咳には小青竜湯など、患者さんの状態に応じて用いています」

 フレイル状態のCOPD患者に対する人参養栄湯の臨床的効果を確認した前向き無作為化比較対象試験では、人参養栄湯の投与群で体重、筋肉量、体脂肪率で改善傾向が見られ、QOL、食欲、抑うつ、不安で有意差が見られたという。

 老親、そして自分のために、COPDの正しい知識を持っておきたい。

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