コロナ第8波に備える最新知識

寒くなるからこそ「換気」の意味を考える アイスホッケー会場の教訓

人出のせいばかりじゃない(C)共同通信社
人出のせいばかりじゃない(C)共同通信社

 新型コロナ感染の急拡大が始まった。第8波の声も聞かれるようになり、季節性インフルエンザとのダブル感染への懸念も広がっている。行動制限や渡航制限の緩和により大勢の人が行き交うことにより感染機会が増えたせい、との声もあるが、気温が下がって寒くなり、屋内で過ごす時間が長くなったことが大きいのではないか。事実、日本でいち早く冬が到来する北海道では11月15日に新規感染者が1万人を突破、過去最多を更新し第8波に突入している。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師が言う。

「注目したいのは同じ寒冷地でも東北でなく北海道で流行していることです。北海道は充実した暖房施設が有名です。私は新型コロナではそれが裏目に出ているのではないか、と考えています。二重窓で気密性が高く、公共施設は集中暖房で暖かい。換気ができるとうたった暖房設備も多く取り入れられています。ただし、それはCO2対策のための換気であり、感染対策のためのものではないからです」

 実際、岩室医師が北海道の高校を訪れ、換気設備の説明を受けた際、換気装置にはCO2を外に出し、熱や湿気は室内にとどめる換気機器を導入し、人がいる時は常に作動させていると聞かされたという。

「感染対策ではCO2濃度に関係なく、空気の流れをつくり、ウイルスを含んだエアロゾルを拡散し、吸い込むウイルス量を減らしつつ、ウイルスを屋外に排気する必要があります。そうでなければウイルスは屋内にとどまる一方です」

 今年1月に北海道・釧路市内で行われたアイスホッケーの試合で起きた大規模クラスターは、その後の調査で、氷の管理のために氷上付近の気流を最小限にするようつくられていて、リンク内やその周辺に気流が停滞。選手ベンチの後方に気流が流れていた。そのため、激しい運動で呼吸量が増えた選手などを感染源にして飛沫や接触、エアロゾルにより最終的に172人に感染が広がったと報告されている。むろん、会場には換気装置があったが感染予防にはならなかった。

「つまり、多くの人に『換気』に対しての誤解があるということです。『ウチは24時間換気だから』『今いる施設は機械換気しているから』特別な対策をとらなくても大丈夫というのは間違いです。換気していても釧路のアイスホッケー場のようにエアロゾルが滞留する場所と流れる場所は混在しています。人数とは関係なく人がいる場所では常に空気が移動、拡散するように配慮することが大切です。そもそもCO2に比べてエアロゾルは重く滞留しやすいことを忘れてはいけません」

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