東洋医学を正しく知って不調改善

不眠に効く漢方薬はあるのか? 3つのタイプ別に処方される

(C)日刊ゲンダイ

 誰しも「眠ろうとしても眠れない」「もう少し眠っていたい」「もっとぐっすりと眠りたい」と思ったことがあるのではないでしょうか。眠りに不満があっても、通常は数日から数週間のうちにまた普通に眠れるようになるものですが、それが長期間続いたり、日中の活動に支障が出たりすると問題になります。

 不眠といっても原因はさまざまで、体の病気、心の病気、または薬や刺激物(カフェインやアルコール)、生活のリズムの乱れ、さらにはストレスや緊張など心理的要因、睡眠を妨げる環境などが挙げられます。

 体や心の病気が原因で不眠が生じている場合、病気の治療が不可欠。一方、薬や刺激物が原因であれば、睡眠の前にこれらのものを控えることが必要です。朝存分に太陽の光を浴び、日中は適度に体を動かし、夜はパソコンやスマホを見ない……といったように少し生活を変えただけで、心地よい眠りを得られることもあります。

 いずれにしても良い眠りのためには日頃から生活のリズムを整え、心と体の緊張を解き、気持ちを落ち着かせることは大切です。

 そしてそんな体のケアや養生の一環として、病気になりづらい心身を維持していくためにも漢方処方は役立ちます。特に不眠に悩まされている場合は、心と体を整える手助けができる漢方を活用することは有効です。

天野陽介氏(提供写真)
天野陽介氏(提供写真)

 不眠を大きく3タイプに分けて、漢方処方を紹介しましょう。

 まずは寝付きが悪いタイプ。神経質だったりイライラしたり、心がざわついて落ち着かず眠りに入れないことが多い。イライラしやすい、怒りっぽい場合は抑肝散。ストレスで食欲がなくなるなど消化器症状を伴う場合は抑肝散加陳皮半夏。

 次に眠りが浅い・夜中に目が覚めてしまうタイプ。ストレスなどでイライラしたり、ささいなことも気になって気持ちがふさぎ込んだりしてしまう場合は、柴胡加竜骨牡蛎湯。貧血ぎみで血色が悪く疲れが取れにくい場合は加味帰脾湯です。

 最後に、いわゆる寝るための体力が低下し、早朝などに起きてしまうタイプ。中年期以降で、疲れやすく、手足や腰からの下半身が冷え、夜間のトイレの回数が多い場合は比較的よく知られる八味地黄丸。同じような症状で冷えが軽度な若年層には六味丸などが効果があるでしょう。

 不眠をこじらせないためにも、早い段階で医師・薬剤師に相談し、自分の症状に合った漢方を処方していただきたいと思います。

天野陽介

天野陽介

日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員。北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部客員研究員も務める。日本伝統鍼灸学会、東亜医学協会、全日本鍼灸学会、日本医史学会、日本東洋医学会所属。

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