コロナ禍で「膝のメリメリ音」を訴える人が増加中…放置しても大丈夫?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 記者は50代。スクワットなどで膝を曲げ伸ばしした際、かすかに「メリメリッ」という音が膝から聞こえることが気になっていた。

 体を動かした際に鳴る「ポキッ」という音とは違い、「メリメリッ」もしくは「ミシミシッ」。小さな音ではあるし、痛みもなかったため放置していたのだが、最近、感じたことがないような違和感を覚えるようになった。膝の中がうずくような感覚だ。

 メリメリ音はなぜ鳴るのか。大宮ひざ関節症クリニック院長、東京女子医大整形外科非常勤講師である大鶴任彦医師によれば、メリメリ、ミシミシ音は膝蓋骨(膝のお皿)の奥にある脂肪体から発生する音だという。

「本来は柔らかい脂肪体が何らかの理由で器質化して硬くなると、膝の曲げ伸ばし時に、メリメリ音が鳴ったり、違和感を覚えるようになります。ポキッという音は、膝関節を覆う袋である関節包の中にある滑膜が、曲げ伸ばし時に引っかかって鳴る音です」(大鶴院長=以下同)

「器質化」とは、体内に入ってきた異物や体内で作られる病的物質を肉芽組織が取り囲み、吸収などの処理をする現象。

 実はここ数年、メリメリ音を訴える患者が増えているそうで、「コロナ禍の自粛生活で下肢の筋力が低下したり、積極的な曲げ伸ばしの頻度が減っていったことも、メリメリやポキッという音が生じる原因のひとつではないか」と大鶴院長は推測する。 

■変形性膝関節症に進む可能性も

 その他、体重の増加、過度に膝をつく姿勢、長時間の歩行や階段昇降などのストレスによっても生じる。ではこのメリメリ音、すぐに行うべき対策はあるのだろうか。

「痛みがなければ、治療の対象にはなりません。しかし年月を重ねて軟骨がすり減ると、変形性膝関節症に進展することがあります。そのような場合、最終的には関節鏡視下手術や人工関節置換術に代表される手術治療が標準治療となります。将来のことを考えて、メリメリ音に気づいたら、痛みが生じる前に簡単な運動を行い、硬くなった膝蓋骨の奥の脂肪体をほぐす習慣をつけましょう」

 お勧めは「お皿グルグル体操」。脂肪体だけでなく、膝蓋骨周囲の靱帯や筋肉の緊張を緩める効果もあるという。

 やり方は実に簡単。膝を伸ばして力を抜き、膝蓋骨を両手で包み込んで左右上下に動かす。イスに浅く腰掛けて、足を前にまっすぐ伸ばすような姿勢で行うといい。1日に数十秒やればOK。さらに、座った姿勢でイスの座面と平行になるくらいまでゆっくりと足を上げ、5秒キープする体操をプラスするのもいい。大腿四頭筋が鍛えられ、軟骨にかかる負荷を軽減できる効果がある。

 違和感が解消せず、痛みもある場合、変形性膝関節症になっている可能性がある。

「一般的に、変形性膝関節症の初期は安静や薬物療法に代表される保存療法、進行期から末期には手術治療が選択されます。しかし保存療法の効果がなく、どうしても手術を選択したくない方には、当クリニックでは『再生医療』と呼ばれる治療を提案しています」

 再生医療には、自身の血液から作成するPRP-FD注射、脂肪から作成する培養幹細胞注射などがあり、全て自由診療。例えば膝へのPRP-FD注射は、大宮ひざ関節症クリニックでは1回27万円だ。

 膝の痛みに悩む顕在患者は国内では1000万人、潜在患者数は3000万人と言われている。年を重ねてもできるだけ大事に至らないよう、記者はまずお皿グルグル体操を日課にして、悪化しないように努めたい。

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