新型コロナに感染したら3~6カ月は「血栓症」に注意すべし

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 11月に入って新型コロナウイルスの感染者が再び増え始め、「第8波が始まった」との声があがっている。23日には全国で13万3095人の新規感染者が確認され、115人が死亡したと発表された。現在の主流になっているオミクロン株「BA.5」は重症化リスクが低いとされるが、感染者が増えれば重症化するケースも多くなる。いつまた自分や家族が感染してもおかしくない状況で、あらためて注意したいのが「血栓症」だ。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏に聞いた。

「感染拡大が始まった当初から、新型コロナウイルス感染症では『血栓』ができやすくなることが世界各国の研究で指摘されています。新型コロナウイルスが細胞へ侵入する際に利用するスパイクタンパク質がいくつもの炎症性サイトカインを放出して血小板凝集を起こしたり、ウイルスが血管内皮細胞を傷つけることで血栓を防ぐ物質が減るなどして血液が固まりやすくなり、血栓が形成されやすい環境になると考えられています」

 新型コロナ感染によって体のあちこちで血栓が作られると、それだけ血栓症のリスクはアップする。血栓が足の静脈にできると「深部静脈血栓症」となり、その血栓が血流に乗って心臓まで移動し肺の動脈に詰まれば「肺血栓塞栓症」を引き起こす。肺血栓塞栓症になると血流が減って十分な呼吸ができなくなる。重症化すれば意識を失ったり、ショック状態になって死亡するリスクが高くなる。

 世界的な医学誌BMJに掲載された約100万人の新型コロナ感染者を対象としたスウェーデンの研究では、新型コロナ感染によって深部静脈血栓症や肺塞栓症を起こすリスクが状況により5~46倍に増加していたと報告されている。

 やはり、新型コロナに感染した場合、血栓症のリスクがあることを頭に入れて、注意したほうがいい。

「同じスウェーデンの研究では、新型コロナに感染してから、深部静脈血栓症で最長3カ月間、肺塞栓症で最長6カ月間は発症リスクが高まると報告しています。また、新型コロナ感染症が軽症だった人でも、肺塞栓症を起こすリスクは通常の7倍でした。この研究はデルタ株以前の感染者が対象で、いま主流のオミクロン株では血栓症を起こす頻度は少なくなっているといいますが、中国の研究では3%くらいに静脈血栓症が認められます。感染した場合、新型コロナ感染症自体は軽症で、7~10日間の自宅療養期間を問題なく終えたとしても、その後、数カ月間は血栓ができやすくなっていると考えて、注意したほうがいいでしょう」

■ふくらはぎを動かし、コップ1杯の水を飲む

 血栓症を予防するためには、「運動」と「水分摂取」が大切だという。

「体を動かすことは、血管を拡張させ血流を増加させるので、血栓の形成を防ぐことにつながります。とりわけ、深部静脈血栓症で血栓が生じるのはふくらはぎが多いので、ふくらはぎを動かす適度な運動が望ましいといえます。感染中に体を動かせる状態であれば、室内を歩き回り、スクワットやストレッチを行うといいでしょう。発熱などで体を動かせないときは、寝転がったり腰掛けたまま足の甲を伸ばしたり、爪先を上げる動作を20回程度こまめに繰り返すと効果的です」

 同時に、水分をこまめに補給する。発熱などによって体内の水分が不足して脱水状態になると血液量が減って血液の粘度が上がる。すると、血流が悪化して血液が固まり、血栓ができやすくなる。

 たとえ喉の渇きを感じていなくても、2時間ごとにコップ1杯程度、200~300㏄の水分を摂取したい。

「血栓は足の静脈や肺動脈だけでなく、心臓につながる冠動脈や脳の血管にも生じるケースがあります。新型コロナに感染後、足のむくみ、皮下出血、胸痛、息切れ、頭痛、麻痺といった症状があるようなら、すぐに医療機関で診察を受けるべきです」

 新型コロナ感染症は軽症でも、軽く考えていると血栓症で命を落とす危険がある。あらためて気をつけたい。

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