死亡率ワースト「膵がん」助かるために知っておくべきポイント4つ…名医が教える

自覚症状なし
自覚症状なし(C)日刊ゲンダイ

 富山大学付属病院は、膵がん治療の名医として知られる藤井努医師が2017年に消化器外科教授として着任。続いて18年、同じく膵がん治療の名医、安田一朗医師が消化器内科教授に着任し、外科・内科の専門医が揃う日本初の膵臓・胆道センターが設立された。安田医師に話を聞いた。

 膵がんは5年生存率が男女ともに8%台。大腸がんでは70%台、胃がんは60%台なので、膵がんの予後の悪さが一目瞭然だ。この膵がんの治療において、富山大学付属病院膵臓・胆道センターでは、類のない良好な治療成績を出している。

 進行がんに対し、化学放射線療法でがんを小さくしてから手術する方法をコンバージョン手術という。富山大学では、切除不能局所進行膵がん144例に対しコンバージョン手術を実施。

「すると普通では手術ができない144例中48例(33%)が手術可能となり、かつ5年生存率が約60%だったのです」

 ただ、こういった「攻めた治療」はどこでも受けられるわけではない。理想は、膵がんを手術できる段階、早期に発見することだ。

「小さいうちに発見できれば予後はそれほど悪くありません。2センチ以下で見つけられれば5年生存率約50%。1センチ以下なら80%で、大腸がん、胃がんよりもいい」

 膵がんの症状は、腹痛、背中痛、腰痛、腹部の違和感、黄疸(白目や皮膚が黄色い)、体重減少など。しかし、これらの症状は、早期ではまず出ない。だから2センチ以下で見つかるのは、膵がん全体の5%、1センチ以下に至っては0.8%とわずかだ。

 症状に頼らない早期発見法はないのか?

■「なりやすさ」「疑いあり」を知る

 家族歴は膵がんの危険因子。血縁家族に膵がん患者が複数人いたり、若年での発症だとよりリスクが高い。

「心配な人は年1回腹部エコーやMRI、血液検査での腫瘍マーカーのチェックを勧めます」

 なお、家族歴の膵がんは遺伝的要因(BRCAなどの遺伝子変異)が関連しており、前立腺がん、乳がん、卵巣がんの発症にも影響を与える。

「糖尿病と初めて診断された」「糖尿病のコントロールが急に悪化した」は背後に膵がんがあるかも、と疑うタイミング。腹部エコーやMRIを。さらに「腹部エコーで膵管拡張、または、嚢胞が指摘された」は絶対に放置せず、定期的に検査が必要だ。

■小さな膵がんを見つけられる検査を受ける

 前項のように「疑いあり」となると造影CT、MRIが行われるが、1センチ以下の小さな膵がんは、これらで発見はできない。

「現在一番感度の良い検査は、超音波内視鏡(EUS)です。胃カメラの先端に超小型の超音波がついており、胃壁に当てて、そのすぐ向こう側にある膵臓を調べるのです。5ミリの膵がんでも見つけられます」

 腫瘤に針を刺して行う細胞診の正診率は、富山大学付属病院で98.7%。1センチ以下でも94.3%。膵管拡張や嚢胞では、受けられるならEUSで調べ、その時にがんの疑いがなくても、前述の通り定期的に腹部エコーや場合によってはMRIを。

■ブラシ擦過細胞診や膵液細胞診を受ける

 5ミリどころか塊にすらなっていない、膵管の表面だけががんになっている状態(ステージ0)で見つける方法もある。特殊なブラシで膵管表面をこすって細胞を取り検査をするのが「ブラシ擦過細胞診」。「膵液細胞診」は、膵管にチューブを入れて膵液を取り、細胞の検査を行う。

「この段階で発見し治療ができれば、ほぼ100%助かります」

■膵管内乳頭粘液性腫瘍なら経過観察

 略して「IPMN」は粘液を産生する腫瘍で非常にポピュラーな病気。ほとんどが良性だが、がん化する可能性がある。IPMNは見つかった時点で悪性を疑う所見がなくても、腹部エコーやMRIなどで経過観察し、がん化の可能性が疑われれば手術が検討される。

 膵がんを過度に恐れることはないが、なりやすい人や疑いがある人は、適切な対策で早期発見に努めよう。

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