「納豆」がアナフィラキシーを起こすケースが…クラゲに刺された人は要注意

納豆アレルギーはクラゲに刺された経験のある人に多い
納豆アレルギーはクラゲに刺された経験のある人に多い

 何が原因だかわからないが調子が悪い--いわゆる不定愁訴の中には、アレルギーが原因である場合が少なくない。アレルギーといえば、アナフィラキシーのように全身の臓器に障害を起こして命に関わるものもあれば、かゆみを伴う皮膚症状や腹痛といった軽微なものまで症状はさまざま。その原因も花粉症のようにアレルゲン物質に触れるとすぐに症状が出るためわかりやすいものもあるが、数時間以上遅れて症状が出ることで何が原因かわからないまま過ごしている人も多い。弘邦医院の林雅之院長に話を聞いた。

「食物アレルギーの中には、食べてからすぐに症状が出る即時型アレルギーと、数時間以降に遅れて症状が出る遅発型アレルギーがあります。遅発型の代表的な存在が『納豆アレルギー』です。2004年に納豆摂取後に10時間以上経過して発症した遅発性アナフィラキシーとして報告され、その後も複数報告されています。納豆アレルギーは納豆の原材料である大豆のアレルギーではなく、納豆のねばねばの成分であるポリガンマグルタミン酸(PGA)が原因となって発症します」

 ある20代の男性は宴会でお酒を飲んだ翌日、午後7時に夕食を取り、入浴後に就寝。翌朝5時にじんましん呼吸苦、胸痛により救急搬送されてアナフィラキシーと診断され、ステロイド点滴で改善した。しかし、翌月、翌々月も同様の症状に襲われたことから受診時記載の食物日記を調べた結果、納豆のアレルギーが強く疑われた。そのため納豆の糸を使った皮膚検査(プリックテスト)をした結果、納豆アレルギーと診断されたという。

 ちなみに、納豆アレルギーが遅発型アレルギーである理由は、納豆菌により生成されるPGAの分子が大きく、腸管から吸収されるサイズまで分解されるのに時間がかかるからだという。

 気をつけたいのが、納豆をたくさん食べたからといって納豆アレルギーになるわけではないことだ。

「注目したいのは、この納豆アレルギーになるのはクラゲに刺された経験のある人に多いことです。横浜市立大学の研究では納豆アレルギー患者の80%以上がクラゲに刺された経験があるサーファーやダイバーだそうです。クラゲは触手に触れると触覚細胞内にPGAを産生し、その浸透圧によって毒針を標的に突き刺します。クラゲに刺された人はこのためPGAアレルギーになり、PGAが多く含まれる納豆を食べると、じんましんやアナフィラキシーを起こすことがあるのです」

 納豆アレルギーを初めて報告した横浜市立大学の研究者は、納豆アレルギーを発症した患者のひとりが中華クラゲを食べてアナフィラキシーを起こしたことがきっかけで、クラゲに刺されたことが納豆アレルギーの発症メカニズムに関連しているのではないか、と疑い研究を始めたという。

■食品添加物をチェックする

 気になるのは、PGAは納豆とはまったく関係のない食品にも、保存料、増粘量、うまみ成分などとして広く使われていることだ。

 たとえば、冷やし中華のたれ、スポーツ飲料、缶コーヒーなどにも使われている。さらには、化粧品、保湿剤、せっけんなどにも含まれていて、クラゲに刺された経験がなくても、PGAの刺激を繰り返すことで徐々にその反応が大きくなる可能性がある。

 実際、17年の神奈川県の医療機関の報告ではクラゲに刺された経験のない14歳の男児が、中華クラゲを食した後にアナフィラキシー症状を起こした症例を報告している。

 医療機関で食用クラゲ4種類を使って調べたところ、タコクラゲに反応があったという。この男児はその後、多くのアレルゲンの項目を調べられたが目立ったものはなかったという。

「いずれにせよ、このアレルギーのある人は、しっかりと添加物などをチェックしてから食物を口にするようにしなければなりません」

 ちなみに、納豆アレルギーの有無は専門性の高い皮膚検査で調べる必要がある。

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