今回はクレアチニン値、正しくは血清クレアチニン値についてお話ししたいと思います。
クレアチニンは、筋肉を動かすためのエネルギーを使った後に出る老廃物の一種。通常は尿に混じって排出されるものです。
ところが腎機能が低下すると、本来体外に排出されるはずのクレアチニンが排出されずに、血液の中にたまっていってしまう。
正常とされる範囲を超えると、血液検査で「異常値」という診断結果になります。クレアチニン値は、腎機能の評価を行うための検査の中では最も一般的な検査。このクレアチニン値を特別な計算値に組み込んで計算した値が、eGFR値となります。eGFR値は、糸球体と呼ばれる腎臓内のろ過機能を担う箇所で、1分間でろ過される血液の量を示します。
クレアチニン値は腎臓の状態を知る上で重要な数値です。ただ、筋肉量が多い方の場合は、ときに不正確になることがある。高く出てしまうことがあるんですね。たとえば、体格がいい若い男性、日々筋トレに励んでいるような方が当てはまりやすいといえます。
反対に、筋肉量が少ない高齢者や子供は低い値が出やすくなる。ですから、一般的に筋肉量が多いとされる男性と、筋肉量が少ない女性ではその基準値は異なっています。
クレアチニン値が高くなってしまうのには、どんな原因があるのか。
大まかには次の3パターンが考えられます。
①生活習慣病(高血圧・糖尿病など)が原因。
②免疫や遺伝の病気が原因。
③筋肉量などが原因で腎臓に異常はない。
「健康診断でクレアチニン値が高いという結果が出て……」と来院された患者さんには、この中でどれに当てはまるかを調べるために、腎臓の特別な採血、尿検査、エコー検査を行います。
つまり、クレアチニン値だけで「慢性腎臓病です」と評価することはないということですね。私は必ずいろいろな視点で腎臓の状態を確認し、診断するようにしています。
「クレアチニン値が高いと、体にどんな症状が現れますか」という質問を患者さんから受けることがありますが、多少基準値を超えている程度では、自覚症状はありません。
患者さんの年齢にもよりますが、自覚症状が出るのは、その値が2.0~3.0㎎/デシリットル以上になった頃。むくみや貧血、全身の倦怠(けんたい)感などの症状が出ますが、この値にまでなると、あと数年で透析が必要となるほどに腎臓が悪くなった状態です。
ですからクレアチニン値が高いという結果が出たなら、「でも元気だし」と放置せずに、できるだけ早いうちにしかるべきクリニックで検査を行っていただきたいと思います。
健康長寿のカギは腎臓にあり