ニューヨークからお届けします。

ワシントンDCの大学キャンパスに緊急避妊薬の自動販売機がお目見え

自動販売機ならいつでも手軽に買える(写真はイメージ)/(C)iStock.jpg
自動販売機ならいつでも手軽に買える(写真はイメージ)/(C)iStock.jpg

 ワシントンDCのジョージ・ワシントン大学に緊急避妊薬の自動販売機が登場し、ニュースになっています。

 販売がスタートしたのは「プランB」という商品名で売られている緊急避妊薬。一般にモーニング・アフターピルと呼ばれる薬のひとつで、セックスで避妊に失敗してから72時間以内に服用、ホルモンの働きで一時的に排卵を遅らせ、妊娠を防ぐ効果があります。

 アメリカではこうした緊急避妊薬は、薬局で処方箋や身分証明書なしで買うことができ、ネットでの購入も可能です。ではなぜそれがあえて今回、大学のキャンパスで売られることになったのか? 販売を後押ししたのは学生自治会だったと伝えられています。

 アメリカでは昨年6月、最高裁が「人工妊娠中絶の権利は憲法で保証されない」という判断を下し、全米50州のうち14州で、中絶は事実上全面禁止となりました。大学のあるワシントンDCでは合法であるものの、全米から学生が集まる有名校だけに、生徒たちのショックと動揺は大きく、せめて緊急避難薬だけでも手軽に手に入るようにしてほしいという要望があったのだそうです。

 モーニング・アフター・ピルはこれまでも学内の医療施設で販売されていましたが、自動販売機なら値段が3割も安い上、夜間や週末にも手軽に買えて、プライバシーも守られるというので、評判は上々とのことです。

 現在自販機で売っている大学は全米で30校程度ですが、最高裁の判断以降、緊急避難薬への関心は飛躍的に高まっていて、今後も校内に自販機を導入する大学は増えそうです。

 これに対し中絶反対派のモーニング・アフター・ピルへの反発も高まっています。そこでFDAアメリカ食品医薬品局は「緊急避妊薬は中絶薬ではない」と宣言。事実がはっきりわかるよう、「プランB」の箱の表示を新しくすると発表しました。

 アメリカでモーニング・アフター・ピルの販売が始まったのは20年前。2014年からは処方箋が必要なくなりました。現在北米とヨーロッパのほぼ全ての国で、薬局で処方箋なしで買うことができます。 

 一方日本や韓国、台湾などほとんどのアジア諸国では、医師の処方箋が必要です。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

関連記事