厚労省が救済を認定 コロナワクチン接種後死亡30人とはどんな人たちなのか

大規模ワクチン接種会場を視察する岸田首相(代表撮影)
大規模ワクチン接種会場を視察する岸田首相(代表撮影)

 新型コロナワクチンの健康被害を審査する厚労省の「第156回疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会」が10日に開催され、新たに10人の死亡一時金(4420万円)と葬祭料(21万2000円)の請求が認められた。これにより昨年7月25日開催の第150回審査会で91歳の女性の接種後死亡の救済が認定されて以来、計7回の審議を経て死亡一時金と葬祭料が認定された合計は30人となった。認定された30人はどのような人たちだったのか? 厚労省の公開資料を改めて整理してみた。

 今回認定された10人の内訳は男性6人、女性4人で、年齢は59~89歳だった。死因は突然死3人、脳出血1人、高血圧と脳幹出血1人、くも膜下出血1人、脳幹梗塞・小脳梗塞1人、うっ血性心不全1人、胸腹部大動脈解離1人、喉頭浮腫1人だった。10人のうち基礎疾患なしは3人で、糖尿病の持病があった5人のうち4人は高血圧症も持っていた。

 10人のデータを具体的に見ると、①突然死した66歳男性(関連する基礎疾患及び既往症として糖尿病、高血圧症、脂質異常症あり)②突然死した78歳男性(糖尿病、糖尿病性腎症第4期、心房細動、左脚ブロック、高血圧症あり)③脳出血死の88歳女性(高血圧症、上室性期外収縮あり)④突然死した73歳男性(糖尿病、末期腎不全、高血圧症、ネフローゼ症候群あり)⑤高血圧と脳幹出血で亡くなった66歳男性(関連する基礎疾患及び既往症なし)⑥うっ血性心不全で亡くなった80歳男性(糖尿病、高血圧症、脂質異常症、じん肺あり)⑦くも膜下出血で亡くなった59歳女性(関連する基礎疾患および既往症なし)⑧脳幹梗塞・小脳梗塞で亡くなった76歳男性(心房細動あり)⑨胸腹部大動脈解離で亡くなった79歳女性(関連する基礎疾患及び既往症なし)⑩喉頭浮腫で死亡した89歳女性(糖尿病、脳梗塞、心房細動、狭心症、慢性心不全、慢性腎不全、閉塞性動脈硬化症、薬剤アレルギーあり)で、死因のほとんどは血管に関連する疾患だった。

 今回分を含めてこれまで認められた死亡一時金と葬祭料30人の性別は男性16人、女性14人。最年少は26歳女性、最高齢は96歳女性。平均年齢は74.8歳だった。

 審査会ごとの認定数を見ると、第150回(2022年7月25日開催)1人、第151回(同9月9日)2人、第152回(同10月17日)1人、第153回(同11月7日)6人、第154回(同12月12日)5人、第155回(23年1月12日)5人、第156回(同2月10日)10人。第153回から明らかに認定人数が増えている。これは、昨年11月2日の衆院厚労委員会で加藤厚労大臣が新型コロナワクチン接種の健康被害申請が急増していることについて「審査の迅速化が必要」との認識を示したことに関連しているのだろう。

■基礎疾患なしは26歳女性を含め5人

 死因は突然死5人、くも膜下出血5人、脳出血(脳幹、小脳出血含む)4人、脳梗塞(脳幹梗塞・小脳梗塞など含む)3人、心筋梗塞2人、急性心不全2人、うっ血性心不全1人、急性冠症候群1人、急性循環不全2人、出血性ショック1人、胸腹部大動脈解離1人、喉頭浮腫1人、脳静脈洞血栓症1人など。

 新型コロナワクチンの副反応はアレルギーや心筋炎を心配する声が多いが、死因としては脳の出血、脳や心臓の梗塞など血管に関連する病気が目立つ。また、血小板減少症が関係するとみられる症例もあった。

 関連する基礎疾患及び既往症なしは26歳女性、36歳男性を含めた5人。逆に基礎疾患及び既往症ありの人の平均病名数は約3つで、中には8つ抱えている人もいた。

 基礎疾患及び既往症で目立ったのは高血圧症の17人、糖尿病の7人だった。

 なお、新型コロナワクチン接種後の健康被害の届け出は、死亡一時金や葬祭料以外に医療費・医療手当や障害年金などについても出されており、これまで受理した件数は6219件。そのうち1622件を認定して、190件を否認、現在の保留件数は31件となっている。

 同分科会は認定にあたって、事例ごとに「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象」との考えに基づいて審査している。

 ちなみに、今年1月20日開催の新型コロナワクチンに関する専門部会に提出された資料「予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について」によると、ワクチン接種が始まって22年12月18日までに医療機関から新型コロナワクチンの副反応として報告があった件数は3万5991件。うち8333件が重篤だった。また、死亡の総数は1967件となっている。

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