アトピー性皮膚炎治療最前線 新薬が続々登場…医師が特に注目するのはこの2剤

アトピー性皮膚炎の新薬が次々登場している
アトピー性皮膚炎の新薬が次々登場している(C)日刊ゲンダイ

 アトピー性皮膚炎の悪化原因はいくつかあるが、その一つがスギ花粉だ。今年は例年より花粉の飛散量が多い地域もあると言われている。そこで押さえておきたいのが薬の最新情報。アトピー性皮膚炎の治療を積極的に行う「巣鴨千石皮ふ科」(東京・豊島区)の小西真絢院長に話を聞いた。

 2018年以降、アトピー性皮膚炎の治療薬が次々と登場。10年ぶりの新薬である「デュピクセント(一般名デュピルマブ)」を皮切りに、2022年までに7剤が発売。今年春にも、新しい薬が発売される見通しだ。

 アトピー性皮膚炎の薬物治療は、外用薬(塗り薬)を用いた外用療法と、内服薬や注射薬を用いた全身療法に分けられる。2018年以降の薬は全身療法のものも多く、従来薬とは作用機序が異なり、効果が高い。外用療法だけで症状が不十分な場合、全身療法との組み合わせを積極的に検討した方がいい。

「現在、全身療法の薬で当院で圧倒的に処方が多いのは、デュピクセント。続いて多いのが、2021年発売のリンヴォック(一般名ウパダシチニブ)です」(小西院長=以下同)

 アトピー性皮膚炎の治療を多く行う医師の間でも、現時点で特に注目されているのはこの2剤だという。

 デュピクセントとリンヴォックの2剤を直接比較した「Heads Up試験」がある。18~75歳の中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者を2群に分け、外用薬は用いずデュピクセントだけ、またはリンヴォックだけを投与し、比較。すると、リンヴォックはデュピクセントよりも早い段階で有効性を示し、16週時における皮膚症状とかゆみの改善率は、どちらもリンヴォックの方が有意に高かった。

「リンヴォックは非常に切れ味がいい。臨床現場でもそれを感じています。飲んで数時間後からかゆみが引いたという患者さんもいました」

 リンヴォックは15ミリグラム錠と30ミリグラム錠があり、「Heads Up試験」で用いられたリンヴォックは最大容量の30ミリグラム錠。15ミリグラム錠でも、デュピクセントより皮膚症状やかゆみの改善率が上回るかは、研究が行われていないので何とも言えない。

「長期間、最大容量を出し続けるのは抵抗があります。どんな薬でも量は少ないに越したことはないからです。そこでリンヴォックを患者さんに使用する場合、症状が落ち着いたら薬の量を減らすようにしています。30ミリグラム錠から15ミリグラム錠への減量、またはその逆の増量は認められているものの、どのタイミングで行えばいいかはデータがないため、医師の判断になります」

■全く効かない患者はほぼいない

 リンヴォック30ミリグラム錠投与の患者では、ニキビやヘルペスといった皮膚感染症の副作用が出やすいというデータもある。一方、デュピクセントはそれらのリスクが少ない。

「デュピクセントは、重篤な副作用がなく、安全性が高いため、使いやすいという利点がある。結膜炎の副作用が報告されていますが、抗アレルギー点眼薬で改善することがほとんど。かゆみを抑えるスピードではリンヴォックが勝りますが、デュピクセントは皮疹を改善する効果に優れており、皮膚がもちもちしてくる。デュピクセントが全く効かない患者さんはほとんどいないという印象です」

 デュピクセントは2週間に1度の注射薬で、外来での注射、または自己注射になる。自己注射は高額療養費制度の対象となるため、そちらを選択する患者が多い。リンヴォックは毎日の内服薬だ。

「注射薬と聞いて躊躇している方も、始めると慣れて、難なく続けられている。ただ、『やっぱりダメ』という患者さんもいて、そういう方にはリンヴォックという選択肢があることを伝えています」

 デュピクセントか、リンヴォックか、はたまた別の新薬か。いずれにしろ、従来薬が効かなかった人も、アトピー性皮膚炎のコントロールが期待できるようになっているのは確か。もしまだその恩恵を受けられていないなら、アトピー性皮膚炎の治療に力を入れる皮膚科医に相談すべきだ。

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