テレワークでリスク増…運動不足な30~40代は「変形性膝関節症」に要注意

変形性膝関節症はデスクワークの人に多くみられる
変形性膝関節症はデスクワークの人に多くみられる

 近年、コロナによるテレワークの普及で「変形性膝関節症」の患者数が増加しているという。膝関節は荷重関節と呼ばれ、体重を支える役割を担っていることから、重力下で生きる人は誰しも発症する可能性がある。「自分で治す!変形性膝関節症」の著者であり、「竹谷内医院」院長の竹谷内康修氏に聞いた。

「テレワークの普及で、通勤する必要がなくなり、あまり外に出ず運動量が減っている人が増えています。座り続けてほとんど体を動かさない生活スタイルを英語で『セデンタリーライフスタイル』と呼び、変形性膝関節症はデスクワーク中心の生活の人に多くみられます。日々の活動性が低いと筋力はどんどん衰え、膝に痛みが生じやすくなるのです」

 膝関節とは、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)が接続する部分を指す。2つの骨は直接ぶつからないように、滑らかで弾力性のある「関節軟骨」で覆われている。この軟骨は2~4ミリほどの厚みがあり、衝撃を吸収したり、関節の動きを滑らかにする役割を担っている。しかし、日々の生活で繰り返している膝の屈伸や加齢によって軟骨は徐々に削れ、削りカスが膝関節を覆っている関節包に炎症を起こし、その結果、関節包の内側にある滑膜に痛みを発生させる。また、関節軟骨がすり減ることで、軟骨を下から支える軟骨下骨にも痛みが生じる場合がある。これらの症状を「変形性膝関節症」と呼ぶ。

 一般的に50代以降に多くみられ、竹谷内医院では60~70代が中心で、男性に比べて女性に多いという。日本整形外科学会の報告でも、男女比は1:4で女性に多い。

 男性に比べて筋力が弱いことや、女性ホルモンが関係しているといわれているが、医学的に理由は完全に明らかにされていない。

「ケガをしていないのに膝に痛みを感じたり、膝の内側が突っ張るような違和感がある場合には、変形性膝関節症の可能性があります。特に段差の大きな階段を下りるときに痛みがより出やすいのが特徴です」

 また、近年ではライフスタイルの変化により、運動不足な人が増えたことで30~40代で発症するケースも珍しくないという。若くても膝に痛みや違和感を感じた場合には、初期段階の可能性があるため注意が必要だ。

 治療法は一般的に消炎鎮痛薬を処方し、症状が重い場合には膝関節内にヒアルロン酸注射を行う。痛みを抑えながら大腿四頭筋強化訓練や関節可動域改善訓練を行い、クリニックによっては、ホットパックで膝を温める物理療法を行うところもある。

「変形性膝関節症が悪化して、痛みで歩くのがつらく日常生活で困っている患者さんには最終手段として人工関節手術を検討します。特に60~70代の患者さんに多いです。手術直後は膝が硬くなりやすいので、リハビリが重要です」

■筋トレで予防・改善できる

 発症が増える中高年はもちろん、テレワークで運動量が減っている人は、膝の痛みに苦しまないためにも予防に努めたい。

「変形性膝関節症の発症予防には、筋トレが最も有効です。具体的に、ウオーキングやジョギングなどを1日30分、週3回行うといいでしょう。また、自宅でできるスクワットも効果的です。5秒かけてゆっくりと腰を下ろし、5秒かけてゆっくり上げる動作を10回で1セットとして、3セット繰り返します。おしりを後ろに突き出しながら椅子に座るイメージで行いましょう。このとき膝がつま先より前に出ないよう、注意してください。膝は荷重関節なため、すり減りを完全に防ぐのは難しいですが、筋トレを行うことで痛みが出ても軽減させられます」

 筋力が衰えてしまうと、膝を支える筋肉をコントロールできなくなり、軟骨が削れやすくなる。膝に痛みがある人は、筋力を強くすると膝の安定性が高まり痛みが和らぐとのことから、症状を軽くするためにも運動習慣を身につけるといい。

「膝が痛いからといって安静にしていると、筋力はさらに衰えて萎縮し、関節は硬くなります。その結果、変形性膝関節症は進行し、痛みが増す悪循環に陥ります。痛みをコントロールしながら足を使い、膝関節に適度な負荷をかけて筋力をつけていくことが悪化させないために重要です。また、変形性膝関節症を発症している人は、一度自身のライフスタイルを振り返り、活動性の高い生活を普段から行っているか見直す必要があります」

 現在、日本における変形性膝関節症を患う人は2500万人以上、さらに痛みがある人は820万人いるとされている。健康寿命を延ばすためにも、早いうちから足の筋トレを始めることだ。

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