ステロイドの効果は実にたくさんありますが、病気の治療としては「抗炎症作用」と「免疫抑制作用」を期待して用いられる場合がほとんどです。
「膠原病」は体内にあるコラーゲンに炎症が起こる病気です。コラーゲンは体内のさまざまな組織に存在しているので、膠原病になるとそれらに影響が出ます。では、なぜコラーゲンに炎症が起こるのかというと、自己免疫が関与しているといわれています。通常であれば細菌やウイルスなどの外的要因に対する防御の役割を担っているのが免疫ですが、ここに異常が起こると本来なら攻撃しないはずの自分の組織を免疫が攻撃してしまうことがあるのです。そのため、膠原病は自己免疫疾患とも言われています。
膠原病は多くの病気の総称で、関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症、全身性強皮症、全身性エリテマトーデスなどが該当し、高齢者に多いのは関節リウマチかと思います。ステロイドが持つ抗炎症作用と免疫抑制作用は、こういった膠原病の治療に効果を発揮します。
また、炎症が過剰に起こってしまうような病気にもステロイドは有効です。その代表的な疾患が「アトピー性皮膚炎」と「気管支喘息」です。アトピー性皮膚炎は皮膚の防御機能が低下し、皮膚へのさまざまな刺激に対して免疫が過剰に反応することで、かゆみや湿疹などの症状が出現します。気管支喘息は呼吸をする際の空気の通り道である気管支に炎症が起こることで気管支が狭くなり、咳や息苦しさといった呼吸器の症状を起こす病気です。いずれも、過剰な炎症によって引き起こされる病気であるためステロイドが使われます。
アトピー性皮膚炎では塗り薬、気管支喘息では吸入薬が用いられるイメージがあるかもしれません。基本的にはそうなのですが、重症の場合には内服薬や注射薬としてステロイドが用いられる場合もあります。
主に免疫や炎症に関連した疾患以外にも、意外なところでは「突発性難聴」にも使われます。突発性難聴の原因は不明なのですが、過去に他の病気に対してステロイドによる治療を行ったところ、難聴も改善したという経験に基づいているといわれています。
このように、ステロイドは病気によってはとても有用なクスリです。ただし、突然クスリをやめてしまうと症状がリバウンドすることも知られています。また、次回お話しするような副作用のリスクが高いクスリでもあります。ですから、症状が改善した場合でも突然やめるのではなく徐々に量を減らしていく必要があるのです。もし、ステロイドを使っている方がいらっしゃるなら、間違っても自己中断したりせず、必ず医師の指示通りにお使いください。
高齢者の正しいクスリとの付き合い方