老親・家族 在宅での看取り方

薬でかえってツラくなっていないか? 見直しでQOLが向上する

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 自分が服用している薬について、いったいどのように症状をコントロールし、どんな副作用があるのか──。患者さん及びご家族がこれらを正しく理解することは、病院での療養か在宅医療かに関係なく、非常に重要だと考えています。

 ただ病院では、薬の説明を詳しく説明する時間をなかなか持てません。病院から在宅医療に切り替えた患者さんのご自宅に伺い、その薬のメリット、デメリットを伝えると、「初めて知った」と驚かれることもしばしば。これまで処方されていた薬の種類や量を見直した結果、薬の量を減らせ、生活の質(QOL)が向上したケースも少なくありません。

 その患者さんは、胆のうがんと喘息を患う55歳の女性。旦那さんと2人暮らしです。

 抗がん剤治療を続ければ余命半年、抗がん剤治療をしなければ1カ月というのが、病院の主治医の見立て。そのため抗がん剤治療にトライしたのですが、副作用の吐き気と貧血がひどく、途中で断念せざるを得なかったとのこと。また、がんの痛みを処方された麻薬性鎮痛剤で何とかしようとしたものの、うまくコントロールできていませんでした。

「昨晩かなり痛みが強かったようですが、今の痛みはどうですか?」(私)

「昨日の痛みは、だいぶおさまりました」(患者)

「痛みの程度を1から10で表すとどのくらいですか?」(私)

「4とか5ぐらい」(患者)

「それは結構痛いですね。息苦しい感じはありますか?」(私)

「喘息なので常に息苦しい感じはあります」(患者)

「脈は速いですね」(私)

「甲状腺機能異常なんですよ。その影響で脈が速いみたいです」(患者)

「今一番痛みが強いのはどこですか?」(私)

「背中です」(患者)

「普段の痛みが強いようなので吐き気止め薬のベースの量を増やしたほうがいいかもしれませんね」(私)

「痛みが減るのはうれしいですね」(患者)

 患者さんとの問診の時間を十分に取ることができるのは在宅医療ならでは。薬についても、言葉を尽くして説明できます。患者さんの本音を引き出し、最善の道を探りながら薬の量や種類を決めていく。患者さん、ご家族、医療チームが一丸となって治療に取り組むため、薬の正しい知識は、患者さんはもちろん、ご家族にも持ってもらうようにしています。

「気になることありますか?」(私)

「まだなにがなんだかって感じですね」(患者)

「そうですよね(聴診)」(私)

「ちょっと大きく息を吸うとせき込んじゃうんです」(患者)

「ジクトルテープの影響かもしれないのでお薬調節していきましょう」(私)

「お願いします」(患者)

 鎮痛のために肌に貼って使用するジクトルテープですが、喘息患者さんには禁忌。別の薬で痛みを鎮静させるため、患者さんに合わせた処方を探ります。患者さんが療養の主役であり、私たち医療スタッフは共演者。役割が明確に分担されているのが在宅医療なのです。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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