「多汗」で手術を受けようと思ったら…絶対にやるべき「2つのこと」

多汗症の手術を受けたのに…
多汗症の手術を受けたのに…

「多汗」が気になり、治療を受けようと思っている人は、その前に頭に入れておきたいことがある。

 汗の悩みを専門に診る「山本英博クリニック」(東京・渋谷)の山本英博院長のもとには、「他院で多汗症の手術を受けた。その後、汗が止まらなくなった」と、再治療を求めてくる患者が少なからずいるという。

「そういった患者さんの共通項として、『交感神経節切除術』を行うと医師から説明されていながら、その実は、交感神経節が切除されていない」(山本院長=以下同)

 体内で発汗指令を出しているのが交感神経節だ。ここを切除することによって、手のひらやワキの発汗を抑制する。多汗症の手術として1996年4月から保険適用になっている。

「交感神経節は発汗だけでなく、他の機能も担っています。また、汗をかく部位によって関係する交感神経節も異なります。そのため交感神経節切除術には正確かつ繊細な手技が求められ、また手術時間も長い。だからなのか、交感神経節を切除せず、交感神経節の間にある“幹”の遮断しか行っていない医師がいるのです。この方法なら時間も短くてすみます」

 遮断術は発汗抑制効果が交感神経節切除術より効果が落ちる上、代償性発汗(後述)が継続しやすい。

 山本院長が患者から見せてもらった、他院での手術同意書には「“節”切除術」ではなく、「“幹”切除術」と書かれていた。

「患者さんは医師の『節切除術』という言葉を信じサインしてしまった。かなり悪質です。『異なる手術をされた』と患者さん側が裁判を起こす例も出ています」

 さらに山本医師が指摘するのは、診療報酬の不正請求の可能性だ。

「交感神経節切除術は保険適用ですが、遮断術は自費診療です。たいていの患者さんは保険適用の治療を希望する。だから医師は交感神経節切除術を最初に提案する。でも、行う治療は遮断術で、しかし患者さんに自費診療の金額を請求できないわけですから、実際は行っていない交感神経節切除術として診療報酬の請求をする……。もしこれが行われていたとしたら、大問題です」

 多汗症の治療を受ける際、最低限チェックすべきこととして、山本院長は次の2つを挙げる。

【「節の切除ですよね」と確認する】

「『節切除術です』と説明があっても、『幹の遮断ではないですよね。節の切除ですよね』と念を押すべきです」

 ホームページなどの説明文も厄介だ。交感神経節切除術(Endoscopic Thoracic Sympathectomy)は、略して「ETS」。

 一方、交感神経幹遮断術(Endoscopic Thoracic Sympathicotomy)も「ETS」。切除術と遮断術で英語のつづりが違うのだが、気付きにくい。

【「両側同時切除を日帰りで」に要注意】

 交感神経節は、脊髄の左右両側に位置する。

「交感神経節切除術は難易度の高い手術。左右両側を同時に、日帰りでできるレベルではない」

 山本院長は、必ず片側ずつしか行わない。

「交感神経節切除も遮断術も、手術後の副作用として、お腹、腰、お尻、太ももに多くの汗が出る代償性発汗がつきもの。ただし、きちんと交換神経節を切除していれば、大抵は次第に治ります」

 まず片側切除で患者さんに代償性発汗を理解してもらう。その上で、1年ほど経過観察し、もう片側の切除を行う。

「これまで施術した例では、片側切除後1年ほどで、手術していない側の汗が少なくなった患者さんが2割ほどいます。両側の切除が本当に必要か、その見極めのためにも、片側ずつの切除にしています」

 交感神経節切除術は保険適用とはいえ、負担額が約12万円かかる(片側の金額、3割保険の場合)。慎重に病院選びを行いたい。

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