糖尿病が“治る”条件…4.8万人のデータから100人に1人は寛解、早期診断により頻度が増加

薬なしで血糖値が「寛解状態」に
薬なしで血糖値が「寛解状態」に(C)日刊ゲンダイ

「一度発症したら一生涯治らない」──。糖尿病は昔からこう言われてきた。

 だからこそ、放置すると網膜症、腎症、神経障害などの合併症から、失明、透析、下肢切断へとつながる怖い病気と知りつつも、受診を敬遠したり、中断した結果、病状が悪化する人も多かった。

 ところが、新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野の藤原和哉特任准教授、曽根博仁教授らの最新研究により、2型糖尿病患者の100人に1人は、薬なしで血糖値が診断基準未満に改善する、「寛解状態」になることがわかったという。研究結果は2023年5月8日に、国際糖尿病専門誌「Diabetes, Obesity and Metabolism(DOM)」に掲載された。どんな人が治るのか? 藤原准教授に聞いた。

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「2型糖尿病が寛解しやすい人は、男性、40歳未満、糖尿病と診断されてからの期間が短い人、ヘモグロビンA1c(以下HbA1c)値がそれほど高くない人、BMI(肥満度)が高い人、1年間の体重減少が大きい人、薬物治療を受けていない人です。とくに1年間の減量幅が5~9.9%、10%以上では寛解の頻度がそれぞれ、2.5倍、5倍となっています。また、5%以上減量した人は寛解後の再発率が低いことも明らかになりました」

 2型糖尿病において、寛解とは生活習慣の改善や一時的な薬物治療、減量などを通して血糖値が正常近くとなり、薬剤を必要とせず、血糖値が診断基準未満まで3カ月以上改善する状態を言う。研究グループは、糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)が保有する日本の糖尿病専門医療機関に通院する2型糖尿病患者4.8万人の長期データを解析することで、2型糖尿病が大きく改善した人の共通点を見いだした。

「研究対象となったのは、登録時に寛解状態になく、HbA1cや体重を継続的に測定している18歳以上の通院患者です。薬物治療を中止して3カ月以上HbA1cが6.5%未満になった人を寛解と定義しました。その結果、4.8万人中3677人が寛解に至り、その頻度は1000人を1年間追跡調査すると、10.5人(約1%)であることが明らかとなりました」

■高齢者は過度な減量に注意

 糖尿病と診断され不安になる人にとっては朗報だが、逆に「私は『40歳以上』『女性』だから寛解できないのか」と落胆してしまう人もいるかもしれない。しかし、研究チームはそうではないという。

「寛解しやすい人の特徴として、年齢、糖尿病罹患期間、HbA1c、BMI、1年間の体重変化、治療の6つの指標を調べています。年齢の影響はそれほど高くはなく、寛解は、『糖尿病の診断から1年未満、HbA1c7%未満、BMI値が高値、1年間の減量幅5%以上、観察開始時に薬物治療なし』との関連が強いことが分かりました。つまり、診断されて間もない、さほど重症でない、比較的肥満度の高い糖尿病の方が、専門医への通院を開始し、体重を減らすことができると、寛解の割合が高いということになります」

 たしかに、糖尿病罹患期間1年未満、HbA1c7%未満、1年間の減量幅5%以上の人は、1000人を1年間追跡すると、それぞれ18.5人、27.8人、25.0人と寛解している人が多い。

「今回の研究は特定の患者さんを追跡調査したものではなく、4.8万人のビッグデータ解析であり、集団の平均の結果を示したものです。これに当てはまる人もいれば当てはまらない人もいます。あくまでも寛解しやすい傾向を示したものであると、ご理解ください。また減量の幅が大きいと寛解が多い結果が得られましたが、肥満度が低い高齢者などの場合は筋力の低下によるフレイルにつがなる恐れもあるため、寛解を目的とした過度な減量には注意してほしい」

 とはいえ、糖尿病専門医に相談しつつ生活習慣の改善による減量を行うことで糖尿病から抜け出せる可能性はゼロではないということは心強い。健診をはじめとした早期の診断が重要であるとともに、糖尿病と診断されたとしても「私は○○だから」などと言い訳して治療をあきらめず、寛解に向けチャレンジしてはどうだろう。

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