放置すると悪性がんに進行…「日光角化症」を防ぐには紫外線対策を

60代以降の男性によく見られる
60代以降の男性によく見られる(C)日刊ゲンダイ

 顔や手の甲の赤いザラザラしたシミが治らない──。ひょっとしたら「日光角化症」かもしれない。日本では毎年新たに10万人が発症するとされ、放置すると悪性度の高い有棘細胞がんに進行して全身に転移する危険がある。虎の門病院皮膚科の林伸和氏に聞いた。

 ◇  ◇  ◇

「日光角化症」とは、紫外線の影響で皮膚の表皮の細胞に異常が起こり、がん化した状態を指す。紫外線が当たりやすい禿頭部や顔、耳や手の甲に発症しやすく、数ミリ~1センチ程度で、赤く表面がザラザラしているのが特徴だ。

「色が赤いので湿疹と間違われやすく、『湿疹の治療をしているのに表面のザラザラ感が消えない』と訴えて病院を受診される患者さんが多いです」

 日光角化症は、痛みやかゆみといった自覚症状がない。皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層で構成され、治療せず放置すると表皮内でとどまっているがん細胞が真皮まで浸潤し、悪性度の高い有棘細胞がんに進行するリスクが高まる。その結果、リンパ節や臓器に転移する危険性があるので、早期に発見するのが大切だ。

「日光角化症は60代以降の男性によく見られ、若い頃から何十年にもわたって紫外線を浴びる頻度が高い生活習慣だった人や紫外線対策をまったくしてこなかった人に発症しやすい。特に農業従事者や牧場労働者、船員、屋外スポーツの選手など、日焼けの頻度が多かった人によく見られます。また、仕事や趣味で毎週ゴルフに行く習慣があった人も、紫外線に当たる時間が長いので注意が必要です」

 日焼けをしても肌が焼けずに赤くなりやすい色白の人は、肌が黒い人に比べてメラニン量が少なく、表皮細胞ががん化しやすいという。

 紫外線が当たりやすい部位に赤くザラザラ、カサカサした斑が見られたら皮膚科を受診したい。

「診察で、ダーモスコピーと呼ばれる特殊な拡大鏡で疑いのある部位を見ます。肌がイチゴの表面のような模様を伴って赤くなる『ストロベリーサイン』が確認されたら、日光角化症の可能性が高い。最終的には皮膚の一部を取って顕微鏡で詳しく見る皮膚生検で、日光角化症かどうかを確認します」

 日光角化症は早期に発見し、しっかり治療を行えば根治でき、生命に影響を及ぼす心配はないという。

■日頃から肌をチェック

 治療は、浸潤傾向が高い人や塗り薬を定期的に塗るのが難しい人、また短期間で確実に治したい人の場合には手術が検討される。

 患部に液体窒素を当てて壊死させ、かさぶたにして取り除く凍結療法も有効だ。

「また、日光角化症が顔面や禿頭部の場合には『イミキモドクリーム』の外用薬でも治療ができます」

 ただし、1日1回、週3日就寝前に塗り、起床後に洗い流す必要がある。これを4週間継続したのち、4週間休薬して病変が消えれば治療は終了だが、効果が不十分な場合には再度4週間塗布を継続することになる。また、重度の炎症反応が生じるリスクもある。外用する際は医師の指示に従い、強い痛みや発赤が現れたら相談するといい。

「患部をメスで取り除く手術と違って、外用薬や液体窒素で治療をした場合、再発する恐れがあります。他の部位に新たに発生することもありますので、日頃から肌をチェックし、ザラザラした紅斑があれば再度皮膚科を受診してください」

 日光角化症を発症させないためには普段からの紫外線対策が重要だ。長時間外で活動する際は日焼け止めを必ず塗り、可能であれば日傘や帽子、アームカバーを使用するといい。

 日光角化症が女性に少ないのは、化粧や日傘などで日頃から紫外線対策に取り組んでいるからだという。

「男性も屋外でスポーツする際には日焼け止めをしっかり塗り、ゴルフであれば、ハーフラウンド終わったタイミングで塗りなおすと日焼け止めの効果をキープできるでしょう」

 頭や耳は自分で確認しにくい。老親がいる人は、定期的に肌に異変がないかチェックし、ザラザラした紅斑があれば早期に皮膚科を受診することだ。

関連記事