東洋医学を正しく知って不調改善

東洋医学では疲労や倦怠感はどう対処する? 器質的疾患は認められないものが対象

疲労や倦怠感の要因は多岐にわたる
疲労や倦怠感の要因は多岐にわたる(C)日刊ゲンダイ

 疲労や倦怠感の要因は非常に多岐にわたります。近年では、確認できる組織障害の程度に比べて大きい身体症状の訴えがある「機能性身体症候群」という概念も提唱されています。

 ちなみに東洋医学では、慢性の疲労・倦怠感があり、しかし器質的疾患は認められないものが主な対象となります。

 東洋医学における基本的考え方では、疲労・倦怠感は気虚(気の不足)、気滞(気の停滞)、血虚(血の不足)、血瘀(血の停滞)、水滞(水分代謝の異常、水の量的・分布)によってあらわれると考えます。

 また、体のさまざまな機能を五臓(肝・心・脾・肺・腎)に結びつけて考えますが、この五臓の中でも特に疲労・倦怠感と関連深いのが脾と腎とされています。脾は消化吸収を、腎は泌尿生殖をそれぞれ担い、腎は生命力とも関連しています。

天野陽介氏(提供写真)
天野陽介氏(提供写真)
日頃から「足三里」や「陰陵泉」を刺激する

 そして、そんな脾の働きを整える代表的なツボに、膝のすぐ下のくぼみから指4本分下の「足三里」、膝の内側にある骨の大きな膨らみとスネの骨との角にある「陰陵泉」、背中の真ん中から指3本分外、ウエストラインからやや上の「脾兪」などがあります。日頃のセルフケアとして、これらのツボを痛気持ちいい程度に圧迫したり、台座付きの市販のお灸をしたりするとよいでしょう。

 日頃から消化のよい食事を心がけ、冷たい飲食物もほどほどにして脾に負担をかけない生活を心がけることも、もちろん重要。特に甘い物の取り過ぎは脾に負担をかけ、失調を招きやすくなるため、取り過ぎには注意したいところです。

 漢方処方としては、体質や体の状態に合わせ「補中益気湯」「六君子湯」「清暑益気湯」「十全大補湯」などの漢方薬が有効。

 いずれにしても、医師・薬剤師・鍼灸師ら専門家にご相談していただくことをお勧めします。

天野陽介

天野陽介

日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員。北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部客員研究員も務める。日本伝統鍼灸学会、東亜医学協会、全日本鍼灸学会、日本医史学会、日本東洋医学会所属。

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