「尿酸値」が高くなると死亡リスクが3倍にアップ…痛風だけじゃない

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「尿酸値」と聞くと、痛風を思い浮かべる人が多いだろう。しかし近年、尿酸値が高いと心血管疾患を引き起こし死亡率を高めると報告されている。夏は最も尿酸値が上がりやすいので、これまで高尿酸値を指摘されてこなかった人も気を付けたい。山形大学大学院医学系研究科公衆衛生学・衛生学講座教授の今田恒夫氏に聞いた。

 尿酸とは、DNAやRNAなどの核酸が分解されてできるプリン体が、さらに分解されてできる老廃物のこと。血清尿酸値の正常上限値は7.0㎎/デシリットルで、それを超えると「高尿酸血症」と診断され、成人男性の4人に1人が該当するといわれる。

 特に夏場は尿酸値が高くなりやすいので注意が必要だという。

「暑さを感じて発汗すると体内の水分量は減少して脱水になりやすく、尿量が減少して尿酸は体内にたまり尿酸値が上がります。また、暑さでビールが進んで飲み過ぎると尿酸のもととなるプリン体の多量摂取だけでなく、アルコールによるさらなる脱水も招きかねないのです。これまで尿酸値がそこまで高くなかった人も夏場は急激に上昇する危険があります」

 尿酸は水に溶けにくく、血中の尿酸値が7.0を超えると徐々に結晶化が進む。尿酸の結晶が足の親指の関節に沈着すると痛風、腎臓に沈着すると腎臓病や尿路結石を引き起こす。

 さらに近年は心血管疾患との関連も指摘されている。

「尿酸が作られる際、同時に活性酸素も作られます。これには細胞を壊す働きがあるので血管が傷つき動脈硬化や血管系の病気を引き起こすと考えられています。また、尿酸が血管内皮細胞を直接障害することが実験で確認されています」

 今田氏が行った一般住民を対象とする研究で尿酸値が1年前と比較して2.0以上上昇すると、心筋梗塞といった心血管疾患による死亡リスクが3倍になると明らかになった。また、血管の障害は脳梗塞や脳卒中も引き起こす危険性も高まる。

■乳製品の摂取が効果的

 尿酸値を上昇させないために、まずは生活習慣から見直したい。

「ビールはプリン体を多く含むと知られています。毎日飲む習慣がある人は、尿酸値の上昇を防ぐためにも1日瓶ビール1本にとどめてください。また、肉類や魚介類もプリン体の量が多い。普段から肉や魚を食べる頻度が高い人は量を半分にし、尿酸の排出を促すとされるヒジキやワカメ、ホウレンソウといった海藻類や野菜を摂取すると、尿酸値の上昇を防げます」

 また、BMIが25以上の肥満体形の人はインスリンの分泌量が増える「高インスリン血症」を発症しているケースが少なくない。インスリンには尿酸の排出を抑制する作用があり、尿酸値は高くなりやすい。肥満気味な人は、脂肪燃焼効果が期待できる30分程度のウオーキングなどの軽い有酸素運動を週3回行うのが効果的だ。ただし、筋肉トレーニングといった短時間に強い負荷をかけて行う無酸素運動は、細胞が壊され核酸の分解が進み尿酸が作られやすくなる。

「牛乳やヨーグルトなどの乳製品も尿酸値の改善に効果的です。牛乳に含まれるカゼインと呼ばれるタンパク質が尿酸の排出を促すと明らかになりました。実際、1日1杯を1カ月間続けた患者さんに、尿酸値の低下がみられたので、毎日継続するのが大切です」

 果汁100%ジュースや甘い清涼飲料水は果糖を多く含み、果糖は代謝される際に副産物として尿酸が作られるので控えるといい。

 普段から尿酸値が高くても、痛風発作が起こらないと自覚症状はない。そのため、放置している人が少なくないという。

「痛風発作の痛みで受診しても、痛みが治まると薬をやめて病院にも来なくなり、治療を中断する方が少なくありません。発作を何度も繰り返しているうちに痛風だけでなく腎臓病や心臓病を引き起こした患者さんを何人も診ました。自己判断で服薬をやめず、通院を継続することが大切です」

 高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインによると、尿酸値が8.0以上で高血圧や腎障害といった合併症がある場合、尿酸降下薬が処方される。無症状でも尿酸値が9.0以上であれば、薬物治療の対象になるという。

 また、日本人は欧米人と比較して遺伝的に尿酸を排出する能力が弱い体質の人が多いとされている。

 健康診断で尿酸値の高さを指摘されたらまずは生活習慣を見直し、痛風発作が起こった際にはしっかりと治療を継続することだ。

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