インターネットが登場し普及したことで、あらゆるものが激変しました。それに伴い、学術的な分野でもネットにまつわる研究量が目に見えて増えました。
ネット社会では雄弁だったり攻撃的だったりする人が、現実社会ではおとなしい。あるいは、ネットとリアルでは行動や態度が異なる──。ネットの世界になると人格や行動が変わるのではないか? こう考える人は多いと思います。
しかし、カーネギーメロン大学の研究(1998年)では、現実社会で人間関係が豊かな人はネットでも人とつながりやすく、苦手な人はネットの中でも孤立しやすい……と指摘されています。つまり、リアルに充実している人(リア充などと呼ばれる人たち)はネットでも同じように充実し、実生活が満たされていない人は、ネットでも同じ傾向になるというのです。
研究では、インターネットが浸透し始めた1998年、73世帯を対象に1~2年間にわたり、ネットの影響が、どれほど社会的関与と心理的幸福に関係しているかを調べました。
その結果、内向的な人にとってインターネットの利用は、家族とのコミュニケーションの低下をもたらすだけでなく、交流するコミュニティーの規模を縮小させる傾向も分かったといいます。また、うつ病の罹患リスクや孤独感が増加する可能性も報告されています。彼らはその後も調査を続け、「Rich get richer model」を提唱します。
これは、現実生活で対人関係や社会的資源に恵まれている人は、ネット上の対人関係の中でも社交的に振る舞う傾向にあるため、ネットの利用で、現実生活での社会的な関わりをさらに広げると考察するものです。ネット利用を経て、より現実生活に増幅されながら還元されるのです。
たとえば、ツイッター(エックス)やユーチューブなどで有名人が何かしらの企画をしたとき、より多くの人との関わりを獲得し、さらに人気が向上するなどは、分かりやすい例でしょう。半面、現実世界で人間関係などに乏しい人は、ネットの世界でも井の中の蛙になりやすい。
リア充の方がネットを上手に使いこなし、さらに現実社会で自分を社会的、金銭的にレベルアップさせるというのは皮肉ですが、こうした背景こそ、どこでも誰とでもつながれるインターネットの特性と言えます。昨今は、月額会費制のWEB上で展開されるコミュニティー「オンラインサロン」などがありますが、著名な方がサロンを開くケースは「Rich get richer model」と言えるでしょう。
この研究は、インターネットだけに自分の居場所を求めても、根本的な解決にはならないことを示唆しています。現実社会での立ち居振る舞いがあるから、インターネットは生きてくる。改めて科学的に説明されると耳が痛い話かもしれません。
今やインターネットは生活に欠かせない存在ですが、身の丈に合った使い方をしないと、思わぬデメリットをもたらすかもしれない。忘れないようにしたいものです。
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