高齢者の正しいクスリとの付き合い方

帯状疱疹の痛みには一般的な鎮痛薬ではあまり効果が得られない

痛みが長期間続くことがある
痛みが長期間続くことがある(C)PIXTA

 抗ウイルス薬の効果で水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖が抑制され、皮膚症状が改善したとしても、「ピリピリした痛み」が長期間続くことがあります。長い場合には数カ月続くケースもあり、帯状疱疹の症状の中では多くの方が困るもののひとつです。前回、水痘・帯状疱疹ウイルスが神経に存在しているとお話ししましたが、このウイルスは神経を障害することでピリピリした痛みを起こします。

 一般的にヒトの組織の中でも、脳や神経は一度傷ついてしまうとほとんど治らない、あるいは治るのに長い時間がかかってしまうという特徴があります。帯状疱疹による痛みが長期間続くケースがあるのは、この特徴に起因しています。

 帯状疱疹による痛みに対しては、一般的な鎮痛薬ではあまり効果が得られません。今後、鎮痛薬についても紹介する予定ですが、一般的な鎮痛薬は直接神経に作用するようなものではないからです。よく用いられるのはビタミンB12です。クスリの成分名でいうとメコバラミンになるのですが、このビタミンは神経にとって重要なもので、末梢神経障害などでよく用いられています。帯状疱疹による痛みは神経の障害によるものなので、そこの修復を促すというのがこのビタミンを用いる目的になるわけですが、残念ながら即効性はありません。長期間服用することで、「そういえば痛みがよくなってきたかな」と感じるくらいです。

 では、長い期間、ピリピリした痛みに耐えなければならないのか……というと、決してそんなことはありません。痛み止めの一種でプレガバリンやミロガバリンという成分のクスリがあります。これらは神経障害性疼痛に用いられるクスリで、整形外科領域でよく使われています。

 プレガバリンやミロガバリンは、神経の興奮を抑えることで鎮痛作用を発揮します。帯状疱疹による痛みも神経の障害が原因なので、これらのクスリが効果を発揮する場合が多いのです。これら以外にも神経障害性疼痛に用いられるクスリはありますが、ほとんどの例でこれらが使われます。そのため、帯状疱疹の治療としてはまず抗ウイルス薬の投与、そして発症した時点で痛みを感じている方も多くいらっしゃるのでプレガバリンやミロガバリンといった神経障害性疼痛に用いられる鎮痛薬、必要に応じてそれらにメコバラミンを追加する、といったケースが多いと思います。

 プレガバリンやミロガバリンは神経の興奮を抑えるとお話ししましたが、脳も神経です。つまり脳の興奮も抑えられるため、副作用として眠気が出ることがあります。こういったクスリを使う際は、車の運転やケガの恐れがある作業に十分注意しましょう。

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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