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コロナワクチンと超過死亡との関係は? 米研究チームが専門誌で報告

ワクチン接種に伴う死亡リスクは認められなかつた(C)ロイター
ワクチン接種に伴う死亡リスクは認められなかつた(C)ロイター

 インターネット上では、「新型コロナウイルスワクチンの接種による超過死亡」といった情報をしばしば見かけます。超過死亡とは、集団の死亡率が一時的に増加し、本来的な死亡率の期待値を超えてしまう現象のことです。しかし、ワクチン接種と超過死亡の関連については、質の高い研究データが限られていました。そんな中、新型コロナウイルスワクチンの死亡リスクを調査した研究論文が、ワクチンに関する専門誌に2023年2月7日付で掲載されました。

 一般的に、ワクチンを接種した人では、健康状態が良好な傾向にあり、ワクチンの効果とは無関係に死亡リスクが低く示されることがあります。そのため、この研究では単純な死亡率を比較せず、超過死亡に関するデータを用いて検討が行われました。

 具体的には、米ウィスコンシン州のミルウォーキー郡において観察された新型コロナウイルス感染症による死亡率を、新型コロナウイルス感染症以外の原因による死亡率で割り、感染症による超過死亡の確率を算出しています。さらに、新型コロナウイルスワクチン接種者の超過死亡の確率を、未接種者の超過死亡の確率で割り、同ワクチンによる相対的な死亡確率が見積もられました。死亡確率が100%を上回れば、ワクチンによる死亡リスクの増加を認めることになります。

 解析の結果、新型コロナウイルスワクチンによる死亡確率は、デルタ変異株が流行した2021年7~9月で17.3%、オミクロン変異株が流行した2022年1~6月で36.2%と、100%を大きく下回り、ワクチン接種に伴う死亡リスクの増加を認めることはありませんでした。

 論文著者らは「死亡に対するワクチン接種の実質的な予防効果が認められた」と結論しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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