Dr.中川 がんサバイバーの知恵

ブラザー・コーンが公表…男性の乳がんは進行して見つかることが多い

乳がんであることを公表したブラザー・コーン
乳がんであることを公表したブラザー・コーン(C)日刊ゲンダイ

 男性デュオ「バブルガム・ブラザーズ」のブラザー・コーンさん(67)が乳がんであることを公表して、話題を呼んでいます。現在、ステージ2。抗がん剤治療の副作用がつらいそうですが、復帰に向けて治療に励んでいるようです。

 乳がんは女性に多いものの、男性はレアケースながら、ゼロではなく、乳がん全体の1%を占めるといわれています。米国では、女性は生涯に8人に1人が罹患(りかん)する一方、男性は1000人に1人です。

 すべての年齢の男性に発症しますが、ピークは60~70代。女性の乳がんより10歳程度高齢になっています。

 性別を問わず近親者に乳がんが1人以上いる男性は、そうではない男性に比べて発症リスクは2倍。胸部や乳房に放射線治療を受けた履歴や病気などで体内の女性ホルモンの量が多いことなどはリスク因子で、遺伝性乳がんとの関係が強いBRCAという遺伝子の変異も、男性乳がんのリスクです。

 男性の乳がんは、認知度が低いことや女性ほど乳房に注意を払うことがないことから、進行して見つかることが多いのですが、ブラザー・コーンさんはステージ2と早期で発見できたのは何よりでしょう。

 症状は、乳輪の後部のしこり(痛みがないことが多い)や乳頭からの出血、皮膚の潰瘍のほか、わきの下のリンパ節の腫れなどです。男性の乳がんは、多くが乳頭付近に発生します。もし家系に乳がんの人がいる男性は入浴のときなどに乳房を見て、触ってみることが早期発見になります。

 疑わしいときは、超音波検査やマンモグラフィー検査などの画像検査を行います。それで異常が見つかると、針で組織を採取して、病理診断で悪性かどうか診断し、治療法を決める上で重要なホルモン受容体やHER2というタンパク質の過剰発現についてもチェックして、治療方針が決定します。

 診断や治療方法は、女性の乳がんと同様で、ほとんど変わりません。同じ進行度なら、治療成績も同様です。

 切除が可能なら、手術と放射線治療を組み合わせることが多いと思います。切除が難しいケースは、抗がん剤やホルモン治療が中心で、場合によっては緩和ケアを組み合わせることに。

 乳がんは早期発見できれば治る可能性が高いがんですから、男性も乳房のセルフチェックを行うとよいでしょう。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事