患者に聞け

鼠径ヘルニア(1)医師の診断は即決「手術しかありません」

痛みの部分を触るとぷくっと膨らみが…
痛みの部分を触るとぷくっと膨らみが…

 神奈川県内在住の浅沼浩さん(仮名=71歳・男性)は、10年前に介護福祉士の資格を取得し、県内外の老人ホーム施設に勤務してきた。

 介護仕事は、ハードな職業である。高齢者を抱きかかえて寝起きさせる時や、入浴介護時など、とくに専門的なコツが要求された。ヘタをすると自らの腰を痛めかねない。実際、腰痛に悩む同僚が何人かいた。

「今年6月、入居者をベッドに寝かせるため、腰を折って抱きかかえました。このとき、お腹の左側下あたりにチクチクという、これまで経験のない痛みを覚えたのです」(浅沼さん)

 当初、下腹部の痛みは食あたりか、腰痛の前兆かと疑った。当日の夜、ベッドで寝返りを打ったときも、下腹部に同じような痛みを感じた。

 以来、不快な痛みが日によって一日中続くこともあり、約1カ月間も繰り返された。

「痛みの部分を手のひらで触ってみると、丘のようにぷくっと膨らんでいました」(浅沼さん)

 1年ほど前、老人ホームに入居している高齢者の男性が同じような症状を訴え、ヘルニアの手術をした治療経験を聞いていた。

 浅沼さんの痛む場所は、正確には脚の左側の付け根部分(鼠径部)である。

 症状は、軽い痛みのほかに、突っ張り感や内臓が引っ張られるような感覚だった。

 7月初め、自宅から近い川崎市内の総合病院を訪ねた。数年前に、「前立腺がん」の手術を受けた馴染みの病院だった。

 診察室で症状を訴えると、担当医からベッドに寝かされ、「どうぞ、せきをするなど下腹部に少し力を入れてみてください」と指示があった。そのまま下腹部を触診した医師から、即決でこう告げられる。

「鼠径ヘルニアですね。治療は手術しかありません」 (つづく)

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