高齢者の正しいクスリとの付き合い方

ビタミンDを過剰摂取すると思わぬ病気を引き起こすリスクあり

ビタミンDの過剰摂取には注意が必要(C)PIXTA
ビタミンDの過剰摂取には注意が必要(C)PIXTA

 前回、ビタミンについて紹介したので、今回はその中のビタミンDについて詳しくお話しします。

 ビタミンDは脂溶性ビタミンのひとつで、骨にとってとても重要な役割を持っています。高齢かつ女性だとどうしても骨粗しょう症のリスクが高くなります。実際にクスリとしてビタミンDを服用しているという方もいらっしゃるでしょう。

 ビタミンDの骨に対する働きは大きく分けて2つあります。ひとつは小腸からのカルシウムの吸収を助ける働きです。カルシウムは食品として摂取してもあまり体内に吸収されません。その吸収を助けるのがビタミンDなのです。もうひとつは体内に吸収されたカルシウムを骨に届けて骨の生成を助ける働きです。

 医薬品として用いられるビタミンDは、じつはただのビタミンDではありません。食品として摂取したビタミンDは、そのままでは体内で有効に働いてくれません。体内に吸収されたビタミンDは肝臓と腎臓で変化します。この変化した状態のものを「活性型ビタミンD」と言い、医薬品のビタミンDはすでに活性型になったものなのです。

 それによって効果が速やかに発揮され、肝臓や腎臓の機能が低下していて十分にビタミンDが活性化されない人でも問題なく働いてくれます。特に、慢性腎臓病で腎機能が低下している人は、このビタミンDの活性化がうまくされないために血液中のカルシウムが低くなってしまう(低カルシウム血症)ケースがあります。そういった場合に医薬品として活性型ビタミンDを服用すると、低カルシウム血症を予防することができるのです。

 一方で、サプリメントにもビタミンDが含まれているものがあります。ビタミンDはカルシウムの吸収を高めるので、過剰になるとカルシウムがたくさん吸収されることで高カルシウム血症になることがあるので注意が必要です。

 軽度の高カルシウム血症はほぼ無症状なのですが、それが高度になると倦怠(けんたい)感や食欲不振、吐き気などの症状が現れます。最悪の場合は死に至るケースもあるので、ビタミンDの過剰摂取には気を付けましょう。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の摂取の目安量は18歳以上の男女ともに8.5㎍、耐用上限量は100㎍と設定されています。また、ビタミンDとカルシウムを同時に摂取(服用)することも場合によっては高カルシウム血症の原因になります。何事もやり過ぎはいけないということですね。

 以前、骨粗しょう症の治療に用いられるビスフォスフォネート製剤についてお話ししましたが、ビタミンDはそういったクスリと併用されるケースが多いです。大事な骨を守るためにも、クスリとうまく付き合っていくためにも、ご自身が使っているクスリ(サプリメント)がどのような効果を持っているかを知っておきましょう。

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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