インフル患者が急増…重症肺炎を避けるため肺炎球菌ワクチンを今すぐ打つべき

肺炎対策も重要
肺炎対策も重要

 インフルエンザが流行している。通常は12月から3月にかけてがインフルエンザの流行シーズンだが、今年はまだ暑さの残る9月から患者が急増。前週と比較しての患者数が、流行の目安を大きく上回っている地域もある。インフルエンザにも十分に気をつけなければいけないが、高齢者においては肺炎対策も重要だ。本人が気づかないうちに肺炎を起こしているケースもある。

 東京都在住の女性は5年前の冬、一回り年上の夫(当時67歳)を肺炎で亡くした。

「生後数カ月の孫が遊びに来ることになっており、夫がちょっと熱っぽいからと、念のために病院を受診したのです。すると『肺炎を起こしている。今すぐ入院』と言われました。翌日には危篤状態になり、そのまま……。暖かくなったら2人で四国遍路しようと計画を立てていたほど夫は元気だった。あまりのことに気持ちが付いていきませんでした」

 国立病院機構東京病院感染症科部長の永井英明医師は「高齢者の肺炎は気付きにくい」と指摘する。

「肺炎の一般的な症状は発熱、咳、痰ですが、高齢者では微熱程度で発熱に気づかないことがある。咳や痰などの呼吸器症状に乏しく、元気がない、食欲がないという症状のみの人もいます。急に症状が進んで、治療が間に合わないことは少なくありません。肺炎は高齢者の大敵なのです」

 インフルエンザに感染すると、肺炎にかかりやすくなる。

「気管・気管支のバリアー機能が壊れ、繊毛の機能が低下し、肺炎で一番多い原因菌、肺炎球菌に感染しやすくなり、肺炎を引き起こす」(永井医師)

 季節性インフルエンザ流行時に肺炎で入院した患者の原因菌として、肺炎球菌が5割以上を占めていたという報告もある(倉敷中央病院による肺炎の原因菌が判明した患者の内訳)。高齢者は持病がある人が珍しくないが、そうなるとより厄介だ。肺炎の原因菌で一番多いのは肺炎球菌と前述したが、この肺炎球菌は小児の鼻咽頭に多数存在し、咳やくしゃみなどで飛沫感染となる。そうやって日常で発症する肺炎球菌感染症の中には、血液の中に肺炎球菌が侵入する重篤な侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)がある。IPDは持病があるほど発症リスクが高くなり、健康な成人を1とした場合、慢性肺疾患がある人で16.4倍、慢性心疾患で15.7倍、糖尿病で12.6倍、慢性腎疾患で25.2倍、がんで43.3倍の発症率だ。

「IPDは非常に経過が速く、国内の研究では、入院初日に亡くなる人が22%、2日以内に亡くなる人が54.3%でした」(永井医師)

■65歳が定期接種の対象

 どう予防すればいいのか?

 コロナの時と同様、細菌やウイルスが体に入り込まないようにする。マスク、手洗い、うがい、口腔ケアが大切だ。規則正しい生活、禁煙、持病の治療も徹底したい。特に喫煙は、明確に肺炎を増やす。

「そして、何といってもワクチン接種が重要です。ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぐ、が世界の共通認識です」(永井医師)

 肺炎球菌ワクチンに関しては、65歳が定期接種の対象(60歳から65歳未満でも条件に該当すれば対象になる)。

 さらに経過措置として2019~23年の間、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の人も定期接種の対象。

 ただ、経過措置は今年度で終了予定で、来年度から65歳以上は定期接種の対象ではなくなる可能性がある。

 定期接種でなければ、自己負担での接種となる。

「私はまだ元気なのでワクチンは打ちません、という人がかなりいます。しかし65歳以上から肺炎が増えるので、ぜひ積極的にワクチン接種を検討してほしい」(永井医師)

 なお、前回打ってから5年以上経っている人は、抗体が落ちているので、再度打ったほうがいい。

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