患者に聞け

鼠径ヘルニア手術(3)悩まされた排尿障害「トイレに駆け込んでも間に合わない」

手術後排尿障害に…
手術後排尿障害に…(C)PIXTA

 連日、猛暑日が続く7月中旬、浅沼浩さん(仮名.71歳=神奈川県川崎市在)は、「鼠径(そけい)ヘルニア」の手術を受けた。

 介護福祉士である浅沼さんは、高齢者の入浴やベッドの寝起き介護で、腹に力を入れる職務も少なくない。病院からは手術前に「しばらくは重い物を持つことや、運動は控えてください」と注意された。

 そのため職場には1週間の休暇届を出した。手術後は自宅で静養していたが、少し困ったことが起こる。手術で左下腹部を4センチほど切開した傷痕が、体をよじったりするとチクッと痛むのだ。痛み自体はそれほどでもないのだが、困ったのは排尿だった。

 退院時、担当医師から「術後の後遺症として排尿に少し支障が起こる患者さんもいます」と告げられていたが、あくまでもそういう「患者さんも」いるだけで、自分には関係ないだろうと思っていた。

「ところが実際、私もお漏らしをしました。子供みたいにパンツの中に漏れてしまうのです。尿意を感じて、急いでトイレに駆け込みますが、どうしても遅れてしまう」

 じつは浅沼さんの排尿障害は今回が初めてではない。数年前、前立腺がんの手術を受けたときも、術後1カ月間ほど同じような排尿障害を経験していた。

 このときは、妻に頼んで紙おむつを購入して着用したという。

「今回も2週間ほど紙おむつのお世話になりました。とくにバスや電車に乗っているときなどは助かりましたね。唐突に尿意に襲われ、我慢ができなくなり、周囲の目を気にしながら用を足したこともありました」

 排尿障害は2週間ほど続いた。粗相を避けるために、尿意とは関係なく早めにトイレに入り、パンツを下ろして排尿を待つこともあったという。

 7月末から職場に復帰した浅沼さんは、排尿障害も消えた。趣味の水泳も再開し、日々、体重70キロ前後の高齢者を抱える通常職務の介護に汗を流している。(この項おわり)

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