量を変えずにダイエット 「時間栄養学的」朝食の取り方

朝食は肉や大豆などタンパク質が豊富な食品を
朝食は肉や大豆などタンパク質が豊富な食品を

 時間栄養学とは「何をどのくらい食べるか」に加え「いつ食べるか」を考慮した新しい栄養学です。同じ人が同じ食べ物を同じ量だけ食べても食べるタイミングによって太りやすくも痩せやすくもなります。時間帯によって栄養の吸収や筋肉や脂肪の合成、排泄が異なるからです。それに関わるのが2017年にノーベル生理学・医学賞を受賞して注目された「時計遺伝子」です。時間栄養学はこの遺伝子と栄養、体内の生理現象などの関係を調べる学問であり、その成果は糖尿病や慢性腎臓病などの治療にも役立つと考えられています。現在わかっている範囲で糖尿病に良いとされる時間栄養学で朝食の取り方を紹介しましょう。

■目標は1カ月2~3キロ

 人間の体は、現状を維持する機能(恒常性)を保とうとします。いきなり大幅減量すると、体の危機を感じて適量の食べ物を口にしただけでも、元の体重に戻ろうとしてしまいます。いわゆるリバウンドです。それを防ぐには恒常性をつかさどる脳をだます必要があります。大幅減量と脳が感じない程度の1カ月2~3キロ減量のペースを保つことが大切です。

■朝食は抜かない

 地球上の生物は24時間周期からなる体内時計があり、それが乱れると睡眠障害や肥満などのリスクを高めます。朝食はその体内時計をリセットする大事な役割を担っています。それを抜くことは体内時計が乱れた、痩せにくい状態で1日がスタートするということです。実際、朝食を抜くことにより、脂質代謝や体温、血糖値などに乱れが生じるほか、エネルギー消費や体重増加にも影響を与えることを示唆する研究発表が数多くなされています。また、朝食を抜いて昼食を取ると、血糖値が急激に上昇し、体内時計がリセットする時間帯がずれ込むため夜型になりやすくなる可能性があります。夜型と肥満との関わりは以前から着目されており、児童1万人以上を対象とした富山県の研究では朝食を毎日食べている群に比べて、ときどき食べる群やまったく食べない群は肥満が多かったと報告。同様の研究結果は複数報告されています。

■朝食は豪華に

 欧米人は「朝食は王様のように、昼食は王子のように、夕食は貧民のように食べよ」と言い、中国人は「朝食は栄養満点に食べ、昼食は腹いっぱいに食べ、夕食は少し食べる」ことにこだわります。古今東西、朝食を重視しているのは、朝食を豪華にして、夕食を質素にする方が健康的だからです。時間栄養学的にも食事のボリュームは朝、昼、晩はそれぞれ4:3:3が理想とされます。

 ただし、朝食を4食べるのはかなり大変だと思いますので、まずは1:1:1を目指して食べるとよいでしょう。

 また、朝食は肉や大豆などタンパク質が豊富な食品を積極的に取ることが大切です。朝はアミノ酸の吸収力が高く、その後筋肉を動かす機会が多い。そのタイミングでタンパク質を取ることで筋肉が増えやすくなります。体を休める夜にタンパク質を取るのとはその意味が変わってきます。ある程度血糖値が上がる食べ物を食べることで朝食による体内時計のリセット力も強まります。朝食はしっかり食べることが大切です。

■1日の断食時間は長いほどいい

 朝食による体内時計の調整力は朝食までの時間、つまり断食時間が長いほど強いことがわかっています。その方が消化器官を休ませる時間が長くなり、細胞内でエネルギーを作るミトコンドリアの活動が効率的になるなど、脂肪が燃えやすい体質に変わっていくからです。例えば、定年を迎えて朝8時に朝食、夜8時に夕食を取る1日断食12時間の規則正しい食生活をしただけで体重が減ったという人は大勢います。毎日の断食時間が12時間などムリ、というのであれば、10時間断食もよいでしょう。これなら、朝6時に朝食、8時に夕食となります。私も食事の内容や量を変えずに絶食時間を長くすることだけで20キロ近く減量した経験があります。肥満の患者さんへの栄養指導でも絶食時間を調整することで効果を上げています。

▽古谷彰子(ふるたに・あきこ)愛国学園短期大学准教授。早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構招聘研究員。管理栄養士として、時間栄養学を基にした栄養指導・研究に従事。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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