健康診断で正常でも高血圧という人も… 専門医が勧める「本当の血圧」測定

毎日測定が必須
毎日測定が必須(C)日刊ゲンダイ

 冬は寒さで全身の血管が収縮するため、血圧が上がりやすい。この時季、押さえておきたい血圧対策のポイントは? 東都クリニック高血圧専門外来の桑島巌医師(循環器内科医)に聞いた。

「血圧、コレステロール、血糖と、動脈硬化に関係する値が軒並み上昇している」

 桑島医師は今年の傾向をこう話す。昨年まではコロナの自粛生活で飲み会などが比較的少なく、数値が安定していた。しかし今年は人と賑やかに飲む機会が増え、来院して数値を測ったら驚くほど上昇──。こんな患者は珍しくないという。

「そもそも健康診断で数値の高さが指摘されていて高血圧治療が必要な人が、症状がないため健康体だと誤認している。『脳卒中、心筋梗塞を起こすリスクがある』と伝えてもピンときていない。健診で指摘されているにもかかわらず放置し、脳卒中などを起こした場合、身体的なつらさに加え、労災が認められにくく、ご家族ともに難儀する。こんなケースを多数見てきました」

 桑島医師が強く勧めるのは日常的な血圧チェックだ。白衣の医師を前にすると数値が高くなる「白衣高血圧」、病院での測定値は正常だが、それ以外の時間や場所では数値が高い「仮面高血圧」(隠れ高血圧)という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。

スマートウオッチは病院では測定できない数値もわかる
スマートウオッチは病院では測定できない数値もわかる(提供写真)
スマートウオッチを活用する

「本当の血圧」を知るには健診や受診時の測定だけでは不十分。仮面高血圧は、持続性高血圧(診察時も診察外も高血圧)より脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高いとの報告もある。正常血圧の脳心血管疾患リスクを1とすると、持続性高血圧は2.94倍、仮面高血圧は3.86倍だ。

「血圧は朝夕はもちろん、日中も測定すべき。コンビニに血圧計が設置されていれば四六時中測れていいのですが、現状はそうではない。家庭と職場に血圧計を置いて測る。スマートウオッチの機能を活用すると、もっと気軽に測定できます。日中の血圧が135/85㎜Hg以上(上、下のどちらかが超えている場合も含む)で続くようなら受診の必要があります」

 スマートウオッチは多機能なウエアラブル端末で、ファーウェイやアップルなど複数のメーカー品がある。腕時計と同様に腕に装着するので、“病院では測定できない数値”もわかる。最近はスマートウオッチの記録を診察に活用する、スマートウオッチ外来を設ける病院もある。

「日常的にチェックすることの利点はいくつもあります。“本当の血圧”を知ることに加え、血圧に自然と意識が向く。仮面高血圧がわかればなんとかせねばとなるでしょうし、降圧薬を服用している人では、日常的なチェックで血圧コントロールの不良を痛感し、薬の飲み忘れが減った例も少なくありません」 

 ちなみに、飲み忘れた場合(朝飲む習慣なのに、昼過ぎに飲み忘れに気づいた、など)は、気づいた時点で飲んでOK。

 ずっと同じ薬を飲み続けている人では、「その薬がきちんと効いているか」の確認にもなる。

「50歳前から高血圧の薬を飲んでいる場合、高齢者になると別のタイプの薬に替えた方がいいことも。また、血圧が上がりやすい冬は、従来薬では血圧が下がり切らない人もいます。薬を追加するかどうかの判断材料に日常的な血圧のチェックが非常に役立ちます」

「年を取ったら、血圧は下げすぎるとかえって有害なのでは」と思う人もいるかもしれない。かつては医師の間でもその見方があった。

 しかし、現在は否定されている。

「2015年実施のアメリカの大規模臨床試験『SPRINT研究』で、収縮期血圧(上の血圧)を140未満まで下げた群より、120未満に下げた群の方が年齢に限らず、脳卒中、心筋梗塞のリスクが低かった。この研究は米国の公的機関による研究で、製薬会社が関わっていない。非常に信頼度が高い」

 脳卒中、心筋梗塞は言うまでもなく命に関わる重大病だ。自分は大丈夫と過信せず、しっかり対策を講じたい。 

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