科学が証明!ストレス解消法

目標は小さくていい…数多く積み重ねることがやる気アップにつながる

上司や同僚からのフィードバックがあると…
上司や同僚からのフィードバックがあると…

 人間は誰かとコミュニケーションを取ることで、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンやオキシトシンの分泌が促され、精神衛生を保つことができます。あまり乗り気ではない仕事だったとしても、日常の中で幸せホルモンを生み出せるコミュニケーションを取ることに留意すれば、ストレスを抱え込まずに済みます。裏を返せば、コミュニケーションを取る機会が少なくなると、不満を感じたり、やる気が低下したりしてしまう。些細なことでも構いませんからコミュニケーションを図った方がいいというわけです。

 その上で、さらにやる気を育むなら、「小さな成功体験」を積み重ねていくことが大切です。モチベーションは、大きな目標をかなえる以上に、意外にも小さな成功の積み重ねこそが重要なのです。

 ひとつの大きな仕事にさまざまなチームで取り組んでいる場合、仕事の全体像が見えにくくなり、そのプロジェクトの歯車のひとつとして稼働している自分が、「一体何をしているのか」わからなくなってしまうことがあると思います。

 そんなときに、上司や同僚からのフィードバックがあると、自分の居場所、やっていることが見えやすくなります。誰からも何も言われない……。つまりコミュニケーションがないと、仕事の小さな達成感を実感できず、自分だけ浮いているのではないかと不安に包まれてしまいます。

 あまりコミュニケーションがない場合、自分の目に見えている範囲で目標を決めるようにしてください。自分が「よし!」と思える目標で構いません。自分で細かく目標地点を設定することは、この後、自分がどこに向かうかを定めてくれる羅針盤のような役割を持ちます。

 アメリカの心理学者スキナーが提唱した「スモールステップ」という学習や仕事の進め方があります。

 人間の脳には「報酬系」という神経のグループがあります。報酬系は、欲求が満たされることで活性化され、やる気が出たり幸福感を覚えたりします。そして、目標の難易度に関係なく、自分で「やる」と決めた目標の達成で、報酬系が活性化されることが、脳波などの測定によって明らかになっています。目標を細かく区切って、小さな成功体験を積み重ねれば、おのずとやる気が出る仕組みが、人間の脳には備わっているのです。

「今日はこの資料を完成させる!」など、毎日小さくてもいいのでタスクを目標にすれば、年間何十回、何百回と成功体験を積み重ねられます。脳の報酬系が何度も刺激され、ものすごく人間のモチベーションを向上させられます。大きなプロジェクトのゴールを目標にしてしまったら、適切な仕事ができていたとしても、成功体験は1年に1回あるかないかです。手応えは、多いに越したことはありません。

 モチベーションは、仕事の大小ではなく、自分次第。コミュニケーションを取りながら、小さな成功体験を生み出せる仕組みをつくる。それこそが、自分の精神衛生をブラッシュアップさせる秘訣です。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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