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専門医が教える「脊柱管狭窄症」の正しい対策…薬か、手術か?

活動性を落とさないようにしてフレイル対策を
活動性を落とさないようにしてフレイル対策を

 50歳以上から徐々に増え始め、60~70歳代に多く見られるのが「腰部脊柱管狭窄症」だ。

「背骨の脊柱管が狭くなり、中を通る神経が圧迫されて痛みやしびれが出てきます」(岩井FESSクリニック・古閑比佐志院長=以下同)

 症状は、次の通り。

・太ももからふくらはぎ、すねにかけて痛み、しびれがある
・前かがみになると、痛みやしびれが楽になる
・歩いてしばらくすると痛みやしびれがひどくなる。休むと楽になるが、歩き出すとまた痛みやしびれが出てくる(間欠性跛行)

「当院は駅から歩いて5分ほどの距離ですが、この距離すら休み休み、という患者さんもいます」

 脊柱管狭窄症の治療は、まず飲み薬や硬膜外ブロック。硬膜外ブロックは、脊髄を包む3枚の膜の外側のスペース(硬膜外)に針を進めて、局所麻酔剤を注入する。2週間に1回程度の頻度で4~5回程度繰り返すのが一般的だ。これで症状が改善すればいいが、痛みやしびれが残っている場合、神経の圧迫を取り除くための手術を検討する。

 腰部脊柱管狭窄症の手術は大きく分けて「切開手術(従来法)」と「内視鏡下手術」。どちらも全身麻酔で行われる。

「切開手術は傷口も大きく、入院日数も10日前後と長い。一方、内視鏡下手術は傷口が小さく、最新の術式では入院期間は2~3日。退院後、速やかに日常生活に戻れます。切開手術と内視鏡下手術では侵襲性に大きな差がある。脊柱管狭窄症の手術においては、内視鏡下が基本です」

「高齢だから手術はちょっと」と躊躇している人もいるかもしれない。しかし高齢だからこそ早く痛みやしびれを取り除き、活動性を落とさないようにしてフレイル対策に努めるべき。

「脊柱管狭窄症は、症状ありき。狭窄の程度で手術の有無を決めるものではありません。画像診断で神経が見えないほど狭窄しているのに、症状がごくごく軽い人もいます。かと思えば、狭窄はひどくなく、しかし患者さんの希望で手術をすると、劇的に症状が軽くなるケースもあります」

 狭窄が脊柱管の何カ所かで起こっていても、それらが全て症状に直結しているとは限らない。

 古閑院長は、事前の検査で慎重に確認し、必要な箇所にだけ手術を行うという。

 内視鏡下手術では、退院後、病院に通ってのリハビリは不要。

「どんどん歩いてください。歩くことがリハビリです、と患者さんには伝えています」

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