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東日本大震災に学ぶ「避難所肺炎」になりやすい人…口腔内ケアが重要

地震発生翌日では石川県内だけで3万人を超える避難者が(C)共同通信社
地震発生翌日では石川県内だけで3万人を超える避難者が(C)共同通信社

 能登半島を震源とする最大震度7の地震の影響で、正月早々、避難所に多くの避難者が身を寄せている。地震発生翌日の1月2日時点では石川県内だけで3万人を超えたという。

 そんな避難所では、避難生活が長期にわたるとさまざまな感染症が発症しやすくなる。その代表が「肺炎」だ。実際、2011年3月11日に発生した東日本大震災でも、震災後の肺炎入院の急増が報告されている。どんな人が「避難所肺炎」になりやすいのか? 弘邦医院(東京・江戸川区)の林雅之院長に聞いた。

「避難所で肺炎になりやすいのは、もともと持病がある人、低栄養になりがちな人、食べ物をしっかり噛めず食が細い人、避難所生活で体を動かすことが少なくて身体機能が衰えた人などです。また、避難所ではじっとしていて動かず、トイレに行くのが嫌で水分補給を積極的にしない人、歯磨きをしない人、入れ歯のケアができずそのための用具がなく、口腔内が不衛生な人などといわれています。とくに注意したいのは高齢者です」

 実際、東日本大震災で最大2万人以上が避難所暮らしを強いられた宮城県気仙沼市内の調査では、「避難所肺炎」になった人の9割は65歳以上だったという。

「まず大切なことは避難所では高齢者を孤立させないことです。そのうえで、なるべく温かくてのみ込みやすい食べ物、たとえばおかゆなどを食べさせるといいと思います。避難所では保存がきくパンのほか、おにぎりなどが配られますが、唾液量が少なく嚥下機能が衰えている高齢者だと食べにくい人も出てきます。それが低栄養につながりかねません。また、入れ歯の手入れや歯磨きなどができているのか、周囲が注意してあげることも必要です。そうでなければ地震関連死が増えていきます」

 自然災害の避難所暮らしは想定以上に長期化する。避難所の閉鎖までの期間は阪神・淡路大震災では平均6カ月、東日本大震災では岩手県で7カ月、宮城県で9カ月、原発事故に見舞われた福島県双葉町住人の埼玉県の避難先の閉鎖にいたっては2年9カ月もかかっている。高齢者の避難所肺炎には十分な注意が必要だ。

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