寒い冬に指が白く変色したら「レイノー現象」を疑う

写真はイメージ
写真はイメージ

 寒い冬の時季、手がかじかんで指の色が赤や紫色に変色した経験はないだろうか。しもやけが代表的だが、急に白く変色した場合には背後に全身の病気が隠れている危険がある。「すずひろクリニック」院長の鈴木王洋氏に聞いた。

「去年の冬は例年と比較して気温が低く、しもやけの症状で受診される方が多く見られました。ただ、指が赤色ではなく急に白く変色した場合には『レイノー現象』を疑う必要があります」

 レイノー現象は、寒さにさらされることで手足の指先の動脈が急激に収縮して血流が悪くなり、指が白く変色する現象のこと。白色(動脈性虚血)→紫色(チアノーゼ)→赤色(血流の再開)といった3相の色調変化が特徴で、主に手指に見られやすい。

 基礎疾患がなく、原因がはっきりと分からない「原発性レイノー症候群」と、基礎疾患に伴う「二次性レイノー症候群」に分類され、スペインの研究ではレイノー現象は女性の4.7%、男性の3.2%に発生し、そのうち89%は原発性だったと報告されている。

「原発性は30歳以下の女性に多く変色は両側に対称的に見られ、発症から時間とともに寛解します。一方、二次性では変色が非対称的に生じやすい特徴があります。二次性の原因疾患には膠原病が挙げられます。なかでも、皮膚や臓器が硬くなる強皮症(びまん皮膚硬化型全身性強皮症、限局皮膚硬化型全身性強皮症)が最も多く、混合性結合組織病や全身性エリテマトーデス、閉塞性動脈硬化症によっても引き起こされます。二次性の場合、指の虚血や壊疽を合併しやすく最悪のケースでは切断に至る可能性も高いので注意が必要です」

■寒冷刺激を避ける

 ある50代の女性は、レイノー現象の症状ですずひろクリニックを受診。二次性レイノー症候群の原因で最も多い強皮症と鑑別するために触診を行うと、皮膚の硬化は見られない。一見すると一次性と考えられたが、血液検査を行うと「抗セントロメア抗体」が陽性で、皮膚硬化が手指だけに見られる限局皮膚硬化型全身性強皮症の予備群と診断された。

「レイノー現象を誘発させないよう、寒い時季には使い捨てカイロの使用や手袋を着用して寒冷刺激を避け、血管を収縮させる喫煙は控えてください」

 特に家の中で冷えやすい脱衣所やトイレに温風ヒーターを設置するのも有効だ。可能であればマットレスの下にホットカーペットを敷き、就寝時も冷やさないよう意識することが大切だという。

 場合によっては、カルシウム拮抗薬などの血管拡張薬の服用や、二次性と診断された場合には原因疾患に対する治療が必要になる。

「気を付けたいのが治療しても症状の改善が見られない方です。強皮症で8年以上レイノー現象の罹患期間がある場合には、肺高血圧のリスクが高くなると報告されています。肺高血圧症は初期の段階では自覚症状がなく、気付いた時には右心不全になるなど予後の良くない病気です。強皮症でレイノー現象が長引く場合には、年に一度、肺高血圧のスクリーニング検査も受けてください」

 また、レイノー現象で原発性と診断された人も、長期的な経過観察が必要だという。実際、原発性レイノー症候群と診断された統計学的研究では、対象者640人のうち、13%はのちに膠原病の診断を受けたと報告されている。

 レイノー現象が見られた際には膠原病も疑い、早期にリウマチ科または循環器内科を受診することだ。

関連記事