例年の3倍に急増中!「溶連菌」は大人が感染すると重症化リスク大

口腔内に特徴的な所見が現れる
口腔内に特徴的な所見が現れる

「溶連菌」の流行が止まらない。東京都は先月21日、調査を開始した1999年以来、溶連菌による「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」が初めて警報基準に達したと発表した。子供がかかる感染症のイメージが強いが、大人が感染した場合、重症化のリスクが高いというから気を付けたい。「ひまわり医院」院長の伊藤大介氏に聞いた。

 溶連菌とは溶血性レンサ球菌の略称で、溶連菌感染症を引き起こすのは、いくつかある種類のうち「A群溶血性レンサ球菌」が9割以上を占める。飛沫感染または接触感染でうつり、2~5日の潜伏期間を経て、38度以上の発熱や強い喉の痛み、倦怠感を引き起こす。一般的な風邪に多いクシャミや鼻水、咳の症状は見られない。

 加えて、溶連菌に感染すると口腔内に特徴的な所見が現れる。次のチェックリスト(一部の症状だけのケースも)に当てはまったら溶連菌の可能性が高いという。

・喉の奥に赤い斑点状の出血がある。
・扁桃が腫れ、そこに白い膿が付着している。
・口蓋垂が腫れている。
・舌に赤いブツブツが見られる。


「本来、溶連菌感染症は夏と冬の時季に流行するのに対して、昨年は少し早い10月ごろから診断される人が増えました。先月、当院で溶連菌と診断された患者さんは29人で、例年と比較して2~3倍に増加しています。マスクの着用率が減少したことが感染拡大の最も大きい要因と考えられます」

 これまで溶連菌といえば、子供がかかりやすい感染症と考えられていたが、流行時期には大人でも感染する。大人の場合、一般的な風邪だと思い込み放置すると、重症化しやすいというから注意したい。代表的な合併症に、関節痛や胸痛、動悸が見られる「リウマチ熱」や、タンパク尿や血尿が出る「急性糸球体腎炎」、皮膚に赤い斑点が生じる「結節性紅斑」が挙げられ、合併症の症状から溶連菌感染症と診断されるケースも少なくない。

「30代の女性は、38度の発熱と喉の痛みがあったものの病院を受診せず、自宅に余っていた抗生物質を服用していました。翌日熱は下がったのですが、しばらくして足のすねに赤色の斑点ができ、バットで殴られるような痛みがあると来院されました。外見から結節性紅斑と分かり、問診で話を聞くと2週間ほど前に喉の痛みがあったといいます。そこで、血液抗体検査を行ったところ、溶連菌の診断に用いられるASOの数値が上昇していました」

■軽快後に発症する合併症に注意

 溶連菌感染症はウイルス性と異なり細菌性なため自然治癒が難しく、抗生物質での治療が必要だ。ペニシリン系薬剤のアモキシシリンが圧倒的に効果が高いといわれ、1日3回10日間の服用で、除菌効果は90%以上とされている。合併症を防ぐためにも熱が下がったからと自己判断で薬の服用を中断せず、処方された量は全て飲み切ることが重要だ。

「ただ、急性糸球体腎炎は溶連菌感染症の症状が治まった後に発症する厄介な合併症です。20代の女性は溶連菌の感染から2週間後に足のむくみで再度受診されました。溶連菌感染症そのものの治療が終わってからも2~4週間程度は足に異変がないか、血尿が出ていないかよく確認する必要があります」

 感染を防ぐには、できるだけ密集した場所は避け、マスクの着用や手洗いうがいをし、こまめな水分摂取で喉を保湿するなど、基本的な感染対策が有効だ。

 コロナが5類に移行してからというもの、他の感染症の流行が後を絶たない。万が一発熱したときに備えて、溶連菌も頭に入れておきたい。

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