「能登半島地震」避難所の食事の現状…高脂質、高塩分のメニューが続き体が悲鳴

珠洲市飯田町(文中の男性とは関係ありません)/
珠洲市飯田町(文中の男性とは関係ありません)/(C)日刊ゲンダイ

 能登半島地震発生から約1カ月が経った。日々報道されているように能登半島内でも地域によって状況はさまざまで、いまだ栄養のある食材が十分に行き届いていない地域や避難所もある。一方で、食べる物はあるが、栄養面では問題が散見されるところもある。ある避難所で炊き出しを行う男性の声を届ける。

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 料理店を経営する男性は、能登半島の真ん中、七尾市の北側に位置する地域で地震に遭った。自宅も料理店も建物自体は倒壊を免れた。料理人としての経験、腕を生かし、1月3日から地域の避難所で炊き出しを開始。当初は料理店で残っていた食材、大量に届いたレトルトや缶詰などを活用し、とにかく体が温まり、おいしく、空腹を満たせる料理を作っていた。

 避難所では個人物資の受け付けはしていないにもかかわらず、消費期限の切れた食材、汚れたビニール袋に詰め込まれた米、包装が破れたもの、冷蔵保存が必要なもの(冷蔵庫が不足している)、電子調理が必要なもの、数が限られたもの(一部の人にしか配れずトラブルの原因になる)などが届き、廃棄せざるをえないことがしばしばあったという。

 現在、男性が懸念しているのは避難所の食事内容の偏りだ。

「私が行っている避難所では、という話ですが、企業さんから食事が提供されるようになり、食べることはできるようになっています。食のフェーズが、命をつなぐものから健康を守るものへと切り替わる段階にあるのです。しかし……」

■同じ献立が続くことも

 4日間、大手の外食チェーンが炊事に入った時は、次のような献立だった。

【1日目】
昼食:豚丼、豚汁、サラダ
夕食:牛そぼろ丼、トマトスープ

【2日目】
昼食:ハンバーグ丼、豚汁、サラダ
夕食:カレーライス、豚汁

【3日目】
昼食:カルビ丼、豚汁、サラダ
夕食:のり弁(磯辺揚げ、唐揚げ、コロッケ、白身魚フライ)、豚汁、サラダ

【4日目】
昼食:イカ焼き
夕食:唐揚げ弁当

「避難所にいる300人近い人の7割ほどが60代以上の高齢者です。脂っこいお肉や揚げ物がメインの高脂質、高塩分の食事が連日続き、かなり参っています。一方、自宅で避難生活を送っている方は肉などが不足していると聞きます。食を提供する側と提供される側のマッチングがうまくいっていない」

 食で被災地を支援することを目的に、料理人を中心に構成された団体は複数ある。そういったところの多くが、野菜がたくさん取れ、減塩・減脂質、消化がよくバリエーションに富んだ献立で、炊き出しをしている。

「ただ、炊き出しの予定やどの企業さんが入ってくるかは自治体が決定しており、現場判断で献立を決められません」

 また、企業の炊事は数日間限定の単発的なもので、前後の食事内容などを考慮していない。

「だから、カレーや丼など同じメニューが続くことは珍しくない。かつ、避難所に炊事に来てくれる企業さんは、大手チェーン店がほとんどです。セントラルキッチンで作った食事を提供したり、自社で仕入れている食材を活用したりするため、能登の生産者の野菜や米を使うことにはなりません。能登半島はもともと野菜や米の産地で、食が豊かな地域。断水が解消され、営業を再開したスーパーもある。地元の生産者さんの食材を仕入れて炊き出しに活用してくれれば、地域の経済を回すことにもなる。しかしなかなかそうはいかない」

 災害時に避難所などで提供された食事で、健康を害する恐れがあることは、専門家からも指摘されている。

 男性は「避難所生活が数カ月にわたる可能性も考えると、統括的に栄養面や献立を管理する専門家が派遣されればいいのですが」と締めくくった。

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