乳幼児の湿疹に注意! 積極的治療で食物アレルギーの連鎖を断つ

保湿スキンケアをしっかり…
保湿スキンケアをしっかり…

 生まれたばかりの赤ちゃんは湿疹を起こしやすいが、それが将来のアレルギー症状へつながっている場合がある。新米パパ・ママが知っておくべきことは?

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 アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎。これらアレルギーの症状は連鎖していることが明らかになっている。

 神奈川県立こども医療センター皮膚科の馬場直子部長が言う。

「年齢別アレルギー疾患有病率を見ると、生まれてすぐに湿疹やアトピー性皮膚炎があり、それから少し遅れて食物アレルギー、その後に気管支喘息、さらにその後にアレルギー性鼻炎があります。アトピー性皮膚炎を入り口とし、食物アレルギーなど、その次のアレルギー症状へと連鎖していく。これをアレルギーマーチと呼びます」

 言い換えれば、アトピー性皮膚炎を起こさない、起こしても早期に適切な治療を開始すれば連鎖を食い止められる(アレルギーマーチを起こさない)可能性があるのだ。

 そこでまず重要になってくるのが十分な「保湿」。というのも乳児の肌は、大人と違って薄くてデリケートで水分を保つ機能が弱く、皮膚が乾燥し、バリアー機能が低下しやすいからだ。

「皮膚のバリアー機能が低下すると、卵などの食品や花粉、ハウスダストといった、本来は皮膚から入ってこられないアレルギー原因物質(抗原)が皮膚から侵入。それらを攻撃しようとする免疫細胞と接触し、経皮感作が起こる。そしてアトピー性皮膚炎という最初のアレルギー症状が引き起こされるのです」(馬場直子部長=以下同)

 全身の保湿をしっかりすることで皮膚のバリアー機能低下を防げる。国立成育医療研究センターの研究者は、アトピー性皮膚炎の家族歴があるハイリスクの乳児に対し、生後すぐから保湿スキンケアをしっかり行った場合、アトピー性皮膚炎の発症がどうなるかを調べた。すると、アトピー性皮膚炎を発症するまでの期間は、特に何もしなかった群に対して有意に延長。32週後でアトピー性皮膚炎の発症を約30%抑えられるとの結果が出た。

■皮膚に湿疹があればステロイド外用薬

 ただし「保湿さえしていればOK」ではない。

「皮膚に赤みや湿疹が出てしまったらアトピー性皮膚炎と考えられる。そうなると保湿剤だけではダメで、ステロイド外用薬を塗らなければなりません」

 それも積極的に塗った方がいい。前出の国立成育医療研究センターが全国の小児アレルギー専門病院と共同で行った最新の研究では、乳児期早期にアトピー性皮膚炎を発症した乳児を無差別に2群に分け、ステロイド外用薬を、一方は湿疹がない部位も含めた全身に、もう一方は湿疹のある部位にだけ塗布。結果、全身にステロイド外用薬を塗った群では経皮感作が抑えられ、生後28週後の鶏卵アレルギーの発症率は25%低かった。

「この研究で、湿疹がある場合、早い段階でステロイド外用薬を積極的に塗った方が経皮感作を抑えられ、食物アレルギーの発症率を下げられることが明らかになったのです。世界で初めての報告になります」

 アレルギー症状は症状がひどくあると生活の質(QOL)が低下し、集中力が低下し、学業や仕事に影響が出ることがある。“入り口”のアトピー性皮膚炎でしっかり食い止め、アレルギーマーチを起こさないようにしたい。ステロイド外用薬の副作用を心配するあまり、適切量を塗らなかったり、勝手にやめたりする新米パパ・ママもいるが、それでは症状をこじらせてしまいかねない。

「湿疹が体の左右対称にできていて、皮膚の乾燥があり、抱っこした時に顔や頭を体に擦り付けるといった『かゆい』ことを示す行動が見られれば、アトピー性皮膚炎です。『乳児湿疹だから様子を見よう』ではなく、速やかに治療を」

 ステロイド外用薬はずっと使い続けるわけではない。小児に使える非ステロイド外用薬の新薬も登場しており、ステロイドで炎症を抑えた後は寛解維持療法として非ステロイド外用薬に切り替えられる。軽症や中等症のアトピー性皮膚炎では、最初から非ステロイド外用薬を使うこともできる。

 医師任せではなく、親が正しい知識を持つことも重要なのだ。

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