独白 愉快な“病人”たち

あんなにグチュグチュしていた肌が…証券アナリスト森永康平さんはアトピー“克服”

森永康平さん(C)日刊ゲンダイ
森永康平さん (証券アナリスト/38歳)=小児喘息・アトピー性皮膚炎

「アトピー性皮膚炎」は大人になっても悩まされていました。顔に出ちゃったときは肌がボロボロすぎて外に出られなかったくらいです。でも、今はテレビ局のメークさんに「肌キレイですね」って言われることもあるんですよ(笑)。

 もともとアレルギー体質で、物心つく前に1度「喘息」で入院しているんです。1週間ぐらいだと思います。自分は覚えていませんが、母親の話によると「痰が肺に絡まっているかもしれない」と、造影剤を入れてレントゲンを撮ることになった際、子供だったので咳き込んで造影剤を吐き出したら、痰が肺の形になって出てきたのだそうです。そんなことは珍しいので、学会で発表されたと親から聞いたことがあります。

 小学生の時も1度喘息で入院していますが、入院したのはその2回だけ。ただ、季節の変わり目には必ず発作が起こり、そのたびに母親に病院に連れて行かれて吸入していました。運動はできたけれど、本気で走るとゼーゼーして、それがきっかけで悪化していくことが多かったように思います。あとは、猫の毛。猫を飼っている友人の家に遊びに行くと、その夜は調子が悪くなっていました。

「季節の変わり目」と「運動」と「猫の毛」。この3つが発作の3大原因でした。吸入すれば、その瞬間は良くなりますが、ゼーゼーは残ります。服用した薬は粉薬ばかりで、その中のひとつがものすごく苦くて、吐き出していたことを覚えています。

 そんな日々が中学生ぐらいまで続いたあと、飲みやすく改良された専用ケースやスプレータイプの薬が出てきて、成長とともにだんだん発作が少なくなりました。小児喘息は体力がつき、自律神経のバランスが取れるようになると治ってくるものだそうで、医師からも「大人になれば治るよ」と言われていたのです。

 言われた当時は「本当か?」と疑っていましたが、高校生でガクンと発作が減って、大学生の頃には自分がミスさえしなければ発作は起きなくなりました。たとえば、「もう大丈夫そう」と思って猫カフェ行っちゃうとかね。やっぱりそれはだめでした(笑)。でも、おかげさまで社会人になって以降、15年以上、まったく発作はありません。

 その点、アトピー性皮膚炎は大人になっても全然、治りませんでした。小さい頃から冬には乾燥、夏には汗が原因で皮膚が荒れました。出やすいのは首と、肘と膝の内側。かゆくなってかくとそこがかさぶたになって、さらにかいて広がっていくという悪循環でした。患部は血液と体液でグチュグチュ。包帯をすると血にくっついてしまうので取る作業が大変でした。

 顔に出てしまうと見た目が悪くなるので外に出られず、仕事にも支障を来していました。

格闘技を初めて20キロ減量したという森永さん(C)日刊ゲンダイ
いまも「保湿」を続けている

 転機になったのは、妻が持ってきてくれた「いい先生がいる」というウワサでした。受診して先生の話を聞くと、その理屈が、これまで診てもらったどの医師よりも自分の中で“腹落ち”したんです。

 アトピー性皮膚炎の治療は、だいたいステロイド(炎症を抑える強い薬)に頼るか頼らないかに二分されるのですが、その先生は「見た目が大変な時だけステロイドを塗って、治ったと思ったら使わないで」という方針でした。その代わりこれだけはやってほしいといわれたのが「保湿」です。医師がすすめる市販の化粧水と乳液をドラッグストアで購入し、お風呂上がりに塗るようになりました。

 私は医者ではないのでわかりませんが、感覚的に両極端なのはあまり信じられなくて、アトピーに限らずなんでも「正解は真ん中にある」というのが持論なのです。だから先生と意見が一致。それで保湿を続けた結果、アトピーが出なくなったんです。あんなにグチュグチュしていた肌が今は跡形もありません。その変化に一番驚いたのは母親です。小さいときからひどい皮膚炎で血まみれだったので、久しぶりに実家に帰ったらびっくりされました。

 その医師いわく、

「男性は普通、お風呂上がりに化粧水などしません。でも何もしないで不摂生な生活を過ごした50歳と、アトピーで若いうちから保湿を徹底した50歳は、圧倒的に差がつきます。若いうちは荒れていても、保湿を続けていれば逆転する。そういういいことがあるから治っても保湿だけはやりなさい」

 ということで、今もお風呂上がりには保湿を欠かしていません。

 小学生の頃はその見た目で「気持ち悪い」と言われました。それはアトピーの症状よりもつらかった。でも今はメークさんにも褒められる肌。ステロイドは一切使っていません。面倒くさがらずに続けることで結果は必ず出ます。体は、手を掛けた分だけちゃんと返ってくると私は思っています。どんなにお金があっても病気で動けなかったらつまらないですから、健康のために時間を使うことが多くなりました。

 じつは格闘技を始めて、試合に出るために今年4月から約2カ月間で20キロ減量しました。不摂生な生活から一転、今は体脂肪を計算通りに落とせるようになりました。

(聞き手=松永詠美子)

▽森永康平(もりなが・こうへい)1985年、埼玉県出身。証券会社などでリサーチ業務に従事した後、アジア各国で新規事業を立ち上げる。現在は子供向け金融教育などを主業とする「㈱マネネ」の代表取締役社長を務め、国内外のベンチャー企業の経営に携わるほか、執筆やメディア出演など多方面で活躍。今年10月にはアマチュア格闘技イベントで初勝利を収め、次戦は来年1月を予定している。



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