白内障手術失敗体験談(8)「医療ミスではないのか?」執刀医に尋ねてみた

15分程度で終わる簡単な手術のはずが…
15分程度で終わる簡単な手術のはずが…(C)iStock

 リカバリー手術が成功し、正常な視力が戻ったいま、私の胸をよぎったのは「医療ミスはなかったのか?」という疑惑です。

 連載にあたり、改めて最初に私の白内障手術を行った眼科医院を訪ねました。院長は国立大学医学部出身のベテラン眼科医です。白内障の手術は白く濁った水晶体を超音波で砕き、それを吸引して取り除き、そこに人工レンズを装着して終わります。たいてい15分程度で終わる簡単な手術のはずです。ところが、私の場合は60分あまりかかったうえ、誤って水晶体後嚢を破損。核片が硝子体に飛び散り、手術続行が不可能になったのです。 

 ──「後嚢破損」の前に手術を中断する選択肢はなかったのですか?

「途中でやめたら、水晶体が膨らんできていろいろ合併症を引き起こし悪さをするので、やめることはできませんでした」

 ──手術前に後嚢破損の可能性を予測できなかったのですか?

「わかっていたら無理はしません。破れるのは瞬間なので、兆候を予測することはできません」

 ──これまでに手術中に後嚢破損した症例はありますか?

「後嚢破損だけなら手術を続行して人工レンズを嚢外に装着できます。今回は破損だけでなく核片が飛び散ったので、手術の続行は無理だと判断しました」

 こうした説明に納得したわけではありませんが、最後に院長は「手術がうまくいかなくて申し訳なかった」と謝罪してくれました。

 手術前に署名した「手術承諾書」には、「術中の合併症として後嚢破損したとき」のことが書いてありました。私の場合、「医療ミスではないか」と主張しても、この承諾書を盾にとられると反論しづらいのです。

 調べてみると、「白内障手術の医療ミスで病院側に慰謝料・賠償金の支払いを命じた判決」もいくつかあるようです。ただ、いずれの場合も「失明」した患者が原告として提訴しています。幸か不幸か「視力が元に戻った私」には当てはまらないようです。

 後嚢破損は500分の1の確率で起きる術中合併症です。白内障の手術のリスクは決してゼロではありません。もしものときを考えて、白内障の手術経験が豊富な総合病院にお世話になるのが一番だといまは考えています。(おわり)

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